現在アメリカのヒップホップシーンではラッパーたちの低年齢化が進んでいる。Lil Pumpや6ix9ineなどのバイラルヒットを生んでいるラッパーも、まだ10代だ。さらにA$AP Mobと深い交流を持つSmooky Margielaaに至っては、まだ15歳だ。
そしてそんな10代の中でも、最も物議を醸す1人がテキサスを拠点にする17歳のラッパーTay-Kだ。彼は殺人事件の容疑者として自宅謹慎状態に置かれていたが、足首につけられていた監視装置を外し、自宅から脱走。
逃走時に楽曲”The Race”を公開し、ミュージックビデオがアップされた6/30に再び警察に逮捕され現在は拘留中だ。彼の共犯者には先日禁固20年の判決が下っており、彼の裁判もどのような判決が下るか大きな注目を集めている。
他の10代のラッパーとは違う生々しいリリックで注目を集めているTay-Kは、日本でも知られるようになったが、彼を支えるマネージャーについてはさほど知られていないように思える。
Tay-Kのマネージャーを務めるEzra Averillは、彼の同級生の17歳でまだ高校生なのだ。
Averillのロングインタビューが経済誌のForbesのウェブサイトに掲載、そこでは彼がどのようにヒップホップシーンに関わるようになり、Tay-Kをどのようにサポートしているかが明かされている。
彼がヒップホップシーンに関わるようになったのは14歳の頃、Tay-Kが参加していたグループDaytona Boyzのマネージメントをスタートしたのがきっかけだ。パートナーのTobyとともにStomp Down EntertainmentをスタートさせたAverillは「テキサスのヒップホップシーンが自分には重要だった、テキサスを再びヒップホップの中心地にするのにフォーカスしていた」と述べている。
彼の運営するStomp Down Entertainmentは、Tay-Kの他にもテキサスの注目株であるMaxo Kreamなども所属している。さらに彼は15歳の頃から彼に投資を行っているLouと共に自身でライブ興行もおこない、15歳の誕生日プレゼントの代わりに、両親に予算をもらいPlayboi Cartiがヘッドライナーを務めるイベントを開催。見事にイベントを黒字にしてみせた。
Tay-Kの”The Race”のおかげで、史上最年少のプラチナムレコードを保有するA&RになったAverillの野望は、テキサスのヒップホップシーンだけでなくアメリカ全土のヒップホップシーンを変えることだ。彼は現在のヒップホップシーンは「おかしなこと」にあふれていると言い、ラップの根源にあったものを取り戻したいと主張する。
ラップとはAverillにとっては、人気や財産の上で成り立つものではなく、あくまで個人の自己表現であり、声なき人の声となるもので、その理想を示すのがTay-KだとAverillは語っている。
Averillは「俺たちは顔にタトゥーも入れないし、ドラッグに汚染されたことについてもラップしない、それは俺たちじゃないからだ」と同じ10代のラッパーたちと線を引く。「Tay-Kは彼が見てきたことをラップする、俺たちのアーティストは彼らのストーリー、彼らが経験したこと、そして乗り越えたことをラップする」とあくまでアーティスト自身のリアルなものを歌うのがヒップホップだと主張した。なので、Tay-KはLil Pumpや6ix9ineなどのようなSoundCloudラッパーではなく、彼は本質的にはギャングスタラッパーだと主張している。
毎日のようにTay-Kと会話をしているというAverillは、彼は無実だと信じていると話しており、近々新曲がリリースされるとも明かした。
Stomp Down Entertainmentをどのように運営したいかという問いに対してAverillは、「俺たちは俺たちが欲しいもののために戦う」と語り、自分たちのやりたいことを達成するためには決して妥協しない姿勢が重要だと意思の強さをみせる。「俺たちはセルアウトしない。俺たちは自分たちのいる場所にこだわり続ける」とAverillは、自分たちが信じるヒップホップを今後も追求していくと話した。
17歳の高校生らしからぬこだわりを持ったEzra AverillとStomp Down Entertainmentは、今後テキサスのヒップホップをどのように再びメインストリームに返り咲かせることができるのだろうか。そのためにはAverillの親友であり、比類ない才能を持つTay-Kの裁判の動向が重要になってくるだろう。
Source: FNMNL フェノメナル