近年、ラップとも混然一体となったヴォーカルワークで従来のスタイルとそのイメージを更新してきた清水翔太。新作アルバム『WHITE』のリリースを前に、彼と、本作収録曲『alone』で共演したSALUの2人に話を聞くことが出来た。
歳は一つ違いで作り手としての意識の部分で共感するところも大きい彼らの共演は一昨年の清水の楽曲『Money(feat. 青山テルマ,SALU)』に続いて2度目となる。互いをアーティストとして大いに認め合う間柄の一端が話からうかがえた。
――お二人のそもそもの出会いは?
清水翔太:一番最初は……若旦那(湘南乃風)さんのやつだよね?
SALU:そうそう。ILMARIさんのお店で若旦那さんの日みたいのをやってて、(青山)テルマから「遊びに来なよ」みたいな感じで言われて、僕はRYKEYと遊び行ったんすけど、そこに翔太君が来てたんだよね。で、一緒のテーブルで飲んで話してもらって。
清水翔太:SALUのことはカッコいい人出てきたなと思って、わりと最初の頃から注目してて。元々ヒップホップは大好きだけど、その頃はまだ今の感じじゃなくてポップス寄りにやってたから「清水翔太なんて」って思われそうで怖いっていう感覚はすごい持ってたんすよ、がっつりヒップホップとかR&Bやってる人に対して。でも、話してみて、全然いい感じに接してくれるんだってわかって、じゃあなんかやりたいなっていうのはあったんです。
――逆にSALUさんはどんな印象を?
SALU:そもそも翔太君の音楽は『HOME』(2008年のデビュー曲)からずっと聴かせてもらってて、普段車でも聴いてたくらいなんですけど、初めてお会いした時に店内でBUDDHA BRANDの『人間発電所』がかかった時にDEV LARGEさんのヴァースとか超歌ってて。そもそもアーティストとして尊敬してたのにヒップホップを愛してる人だってわかって、もしかしたら仲良くなって音楽とかもやれるのかなってそん時思って。そしたらオファーいただいたんで、こっちからしたら「ついに来た」っていう。
――アーティストとしてお互いどのように見てますか?
清水翔太:自分から発信してる人ってところで戦いもあるだろうし、音楽的に気になるっていうのもあるけど、それ以上に頑張ってるってすごく思う人。根本のところで常にすごく気にしてるし、語らずともやってること見ればわかるから、すごい勇気づけられる瞬間が多いですね。これ俺どうかなって思う時も、「まあSALUもやってるしいいか」みたいな、もう全てにおいて。ミュージックビデオもそうだし、曲もそうだし、SNSとかいろんなところのやり方もそうだし。SALUがいなかったらちょっと違っただろうなと思うぐらい。
SALU:いやあ、ちょっとここまで感動させられると思ってなくてびっくりしちゃいましたけど。「あれ、今孤独じゃなくなっちゃったな」みたいな。
清水翔太:(笑)。だから、今回アーティストの孤独をテーマに『alone』って曲書いて、それを同じレベルで曲中で言えるのはもうSALUしかいないと思って、一緒にやりたかったんですよね。そこが自分にとって救いになるからこそ、背中合わせで歌いたかったっていうか、お互いこういう人がいるから戦えるけどっていう感じで。
――『alone』は、『Money feat. 青山テルマ,SALU』(’16)に続く共演となりますが、曲のオファーを受けてSALUさんはどう思いました?
SALU:予想はついてましたけど、やっぱ翔太君も孤独なんだなあと思って(笑)。なんかいつまでこの感じ続くんだろうと僕は自分で思ってましたけど、もしかしてもっと孤独になってるの?みたいな(笑)。
でも僕の勝手な考えですけど、翔太君が今のスタイルに近づいていくにつれて、孤独が増したとしても楽しいんじゃないかなって。僕も最初はやらされる仕事に対してだったり、デビューしたら「あんなのラップじゃない」とか言われたり、そういうところでの孤独だったり憤りはあったけど、今の自分発信でやる感じになってから、孤独だったり大変なことが増えても、その分楽しいっていうか、生きてる感じがするし。
――でも、そこに行くまでには葛藤があったんですよね?
清水翔太:もちろん。今、SALUが言ったように、ホントの俺はこうなんだけどなとかっていうのは当然あって。でも、その折り合いがすごい難しくて、ムダにコアなことやってもお客さんはそこについて来なかったり、そういうのいろいろやり尽くして今やっと一番ナチュラルな自分のスタイルに落ち着いた。そういう流れもSALUと似てる気がしてて。そこがすれ違う人とはちゃんとセッションして曲作らなきゃいけないけど、そこがめんどくさいから、すぐにわかってほしいし、SALUは曲もオファーが来た意味もすぐ理解してくれるって思ったし、実際してくれた。だからいいものが出来る、出来たっていうふうに思う。
――今回、アルバムとしてはなにより今の自分を表現したいっていう気持ちで?
清水翔太:うん。昔は過去のことを掘り返して美化して曲にした。恋愛にしても美しいものを世の中に出す、生々しいものとかエッジの利いたものじゃなくて、きれいなもの、耳障りのいいものにしてたくさんの人に届けるっていう感覚を求められたし、そうあるべきなのかなって思いながらやってたけど、今は思った、伝えたい、曲にするって感じ。そのNOWでやってく感じが楽しいし、今思ってることが作品に反映されるスタイルなんで、全体的にそういう雰囲気の一貫性はあるかもしれない。
――今の自分を映した上で、どういうアルバムにしたいっていうようなヴィジョンはありました?
清水翔太:やるべきこととやりたいことが多すぎてホント、ストレスになるっていうか、今日作ってるものと明日作るものが180度違ったりとかもするんだけど、完璧主義だから作品の統一感みたいなものはすごい気にするし、それが混ざっちゃってアルバムとして気に入らないっていうのも今までいっぱいあったから、結果何も考えないっていう結論に至って(笑)。思いついた方行って、それが間違ってたら戻ってしかないっていう。
――『WHITE』っていうタイトルも、そういうまっさらな気持ちを言ったものですか?
清水翔太:ホントにピュアなクリエイティヴってなんだろうって考えた時に、結局プロでメジャーレーベルでやっていくってなると、ビジネスとしてやっぱりどうしてもいろんな人の思いが乗ってくるんで、別の色がついちゃう。その色がきれいなこともあるし、不協和音になっちゃう時もあるんだけど、一旦真っ白で勝負したいっていうのはずっと前から思ってて。その意味の〈white〉と、リスナーが作品と向き合うことが少なくなってる今の時代に、もうちょっと向き合ってもらえる作品を作りたいなと思った時に、他に何もない真っ白な空間で向き合ってもらうっていうイメージが浮かんだんで、そういう意味の〈white〉の2つですね。
――ともあれ、さっき話されたような作り手としての孤独とか葛藤はアルバム全体の底にも流れてて、聴き心地のよさで終わるアルバムではないですよね。それが本作の核ともなってるわけで。
清水翔太:そこはヒップホップが好きだからこそ出来たことっていうか。結局今一番メッセージっていう意味で重みがあるのはヒップホップだと思うんですよ、邦楽で。自分がどんな音楽性になろうと、ヒップホップの人達がやってるメッセージの重さみたいなものは自分も大事にしたいし、たとえポップスになろうとも、どんなにアホっぽいパーティソングやるにしても、「え?今なんて言ったこの人」みたいな、どっかに刺さるパンチライン入れたいし、それを表現しないと意味がないって意識はどの曲でも持ってますね。
SALU:もうそのスタイルはヒップホップって言うんだと思いますよ。(笑)
清水翔太:そうだと思う。周りが全員そうじゃないって言ったとしても、「いや、これがヒップホップだと思う」って感覚で俺はやってたから。だからこそ今を頑張って生きてる人達と一緒に曲をやりたいと思ったし。
――曲作りについても聞きたいんですが、翔太さんは今回のアルバムでもビートメイクから編曲・プロデュースまでご自身でされてますよね。元々全部自分でやりたいっていう志向があったんですか?
清水翔太:一応あったけど、仕事増えるだけだし、前はデモみたいなトラック作ってアレンジしてもらうって感じで。でも、「いやここ一番こだわってる音なのにそうしちゃう?」とかあってめんどくさいし、「あなたがやった音をファイルで下さい」とか言われるし、だったら最初から自分で出来た方が早いと思って。
――じゃあやりたいっていうよりも必要に迫られてという方が近い?
清水翔太:結局そうしないと100%自分の世界観を表現出来ないからめんどくさいけど、頑張ろうみたいな。楽しいすけどね。
――そうすることで曲への思い入れも当然強くなるし、曲への向かい方も変わってきますよね。
清水翔太:それが出来る時代になったっていうのもありますけどね。それこそSALUもやってるようにウチで歌も録ってますみたいのが半分ぐらいあるし。
――通常、曲作りのとっかかりはやっぱりビートなんですか?
清水翔太:歌詞で言えば単語一つでも一行でもなんでもいいからこうだなーって思ったことを常にメモってるけど、音は遊び感覚でビート作ってて、ちょっとよくなるかなと思ってから本気出すみたいな。
――最初にこういう曲を作りたいみたいなアイディアから始めることはないっていう。
清水翔太:うん。作ってる中で前に言いたいと思ってたあのことが合いそうっていうこととかをハメて行ってみるみたいな。
――そこは生まれるままに任せて。
清水翔太:僕にとって曲作りは運なんですよ。その日その瞬間に自分のスタジオ部屋に座ってたから出来たっていうだけ。その時の感覚だし、音とかも「このキックいいな」ぐらいにパッと選んだプリセットの中から弾いてってそれ以上探さないんで。で、結局出来て、「なんかカッコよくねえな」ってなったらもう捨てるんで、全曲その瞬間いいのと出会えた運でしかない。
――リリックは最初から最後までツルっと書けるものなんですか?
清水翔太:というよりツルっと行く時が好き。ツルっと行かない時は大体あんまいい曲になんないですね、僕は。韻で悩むことはもちろんありますけど、こっからどうしても思いつかないなって時はやめちゃうことも多いです。
――SALUさんはどうですか?
SALU:基本的にずっと言葉を探して毎日生きてるんで、ストックみたいな言葉はある。でも音の前に立った時に見返してそっから持ってくるみたいなことはあんまなくて。頭ん中に残ってて、その時の感情でフリースタイルに近い感じでそれが出て来て、最初から最後まで一本で行けるぐらいの感じで大抵のものは出来てますね。
清水翔太:結局そうじゃないと面白いもんになんないというか、その瞬発力が大事だと思ってて。たぶんじっくり考え始めたら納得行かないんだと思う。
SALU:だから今はこれしか出来ませんって認める作業かもしれないです。まだここまでしか来れないすみたいな。
――なるほど。考え始めたらそれこそ終わりがないわけですしね。
清水翔太:ていうか、意外とそれぐらいの感覚のもんが結果名曲みたいに言われたりするんで。メチャメチャ考えて計算してってものがサーっと通り過ぎることもあるし、バーッと書いて「これでいっか」みたいな感じで書いたもんが「素晴らしい」みたいに言われたり。
SALU:「ウソでしょ? ホントに?」みたいなね(笑)。
清水翔太:そんなもん。自分でもよくわかんないけど、後々考えたらこれってこういうことなんだって自分もリスナーになれるようなものが面白い。
――結局はそういう踏ん切りとか瞬発力が曲の力になるし、往々にして説明できない、説明しきれないものって面白いですからね。改めて今回の『WHITE』の手ごたえを聞かせてもらえれば。
清水翔太:すごい気に入ってますね。今までで最高のものになったと思います。あとは聴いてくれとしか言えないですね。
――SALUさんも、もう『WHITE』を聴かれました?
SALU:まだ『alone』と、SNS限定の『WHITE』しか聴いてないんですけど、あれすげえ好きなんですよ。海外の人には多いんですけど、アーティストとしての自分と、その裏にいるプライベートの自分を歌うっていうスタイルをここまでカッコよく現行のサウンドに乗せて、しかもこういう経歴をお持ちの方がついに日本でメジャーから出てきたんだってすごく嬉しく聴いてました。
清水翔太:ありがとうございます(笑)。
――今後についても一言もらえれば。
清水翔太:よく考えてみると俺、人の曲には全然参加してなくて、呼ぶばっかりで。だから人のとこに出てみたいっすね。
SALU:翔太君が思ってる以上に周りの人は勘ぐってるかもしんないすね。「さすがに俺なんかが翔太君にはオファーできない」みたいなね(笑)。
清水翔太:そう思ってる人達に対して、みんなが思ってる以上に聴いてるよっていうのがあるんで。
――じゃあこの記事をきっかけに遠慮なくオファーを、と(笑)。
清水翔太:一報ください(笑)。
SALU:僕も目先の仕事のことより、翔太君をこっちに呼ぶことを考えて。「よく聴くとこのサビの後ろのコーラス翔太君なんだよね」みたいな(笑)。
清水翔太:是非是非。ホント、チョイ役でもいい。
SALU:あとは(今後については)メチャクチャにしてやろうかなと。そういうことをみんな楽しみにしてるし、ずっとそれ夢見てたし、そういう心の準備が整い始めてきたんで。とにかく曲書きますっていうだけかな。
TEXT:HIROYUKI ICHINOKI
PHOTO:HIROKI OBARA
≪商品概要≫
アーティスト:清水翔太
アルバム名:「WHITE」
発売日:6月27日発売
【初回生産限定盤 CD+DVD】
¥3,900+税
初回仕様:豪華ブックレット+三方背スリーブ仕様予定
DVD収録内容: 「SHOTA SHIMIZU 10th Anniversary Event for Family」から
「Sorry Not Sorry」「My Boo」「HOME」「your song」「Tokyo」の5曲を収録
【通常盤 CD】
¥3,000+税
【収録予定楽曲】
1. dance with me.
2 .Good Life
3. Friday
4. (I’m fine)
5. Silver & Gold
6. 踊り続けよう
7. Range Rover
8. Beautiful
9. alone feat.SALU
10. Rainbo
【2018年清水翔太全国ツアー公演スケジュール】
9月10日(月)日本武道館 OPEN 17:30 / START 18:30
9月11日(火)日本武道館 OPEN 17:30 / START 18:30
9月17日(月・祝)大阪城ホール OPEN 17:00 / START 18:00
Source: Abema HIPHOP TIMES