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【インタビュー】16FLIP 『The Definition of This Word』| 存在としてヒップホップでありたい

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完全復活を遂げたBesがリリースした3rdアルバムを、ISSUGIのビートメイカー名義である16FLIPがリミックスしたアルバム『The Definition of This Word』が、9月にリリースされた。

以前からフェイバリットなMCだとBesについて語っていた16FLIPは、このアルバムで、曲順などの構成にも手を加え、オリジナルとはまた違った形でBesというMCの魅力を引き出している。以前にもSEEDAのリミックスアルバム『Roots & Buds』をリリースしたことのある、16FLIPはこのアルバムにどのような姿勢で臨んだのか。

またラップ、ビートメイク、DJの3つが自分の中でいい意味で混ざってきていると話す16FLIPが、なぜこれまで名義を分けていたかなどについても話を聞いた。

取材・構成 : 和田哲郎

– 去年取材させてもらったときにも「Besは本当にすごい良いMCだと思ってる」と言ってましたが、がっつりやってみたいというのはありましたか?

16FLIP – 今回のもリミックスアルバムですが、いつでもBesとだったら何か一緒に作りたいなとは思ってますね。Besは色んないい部分が有るとおもうんですが乗せ方がまず好きです。最初に会ったのは2000年代前半にbedでライブを見たのが初めでSWANKY SWIPEヤバいなと思ったのは覚えてますね。そのときは日本のヒップホップで、一番先にいってるのがこの人たちだなと思いました。Bes君、EISHIN君2人ともリズム感がずば抜けてたと思うし、聴いた事ないフロウでライブで使うビートもセンス良かったですね。今までに聴いた事ない日本人のラッパーでした。

– リミックスアルバムの話はどうやって始まったんですか?

16FLIP – オリジナルのアルバムが出たあとに、電話をもらってリミックスアルバムをやってほしいんだよねって頼まれて。面白そうだなと思って、すぐに「やります」って返事をしましたね。今回のアルバムで使ったビートは3分の1くらいが元々あったもので、あとは作ってハメていったんですけど、結局おれ一人が全部やるんで、まとまるのはわかってたので、あとはその中でどう1枚にまとめようかなって思ってましたね。

– サンプルネタに使ったもので印象的なものはあったりしますか?

16FLIP – トラスムンドのハマさんが「これISSUGIくん好きそうだからあげるよ」ってくれたCDがあってそこから作ったビートとかもあります。それは印象に残ってますね。人がくれた曲で作ったビートは印象に残ってるんですよ。おれ結構そういうのあるんです(笑) 言えばキリがないくらいあって、知り合いのDJがくれたり、一番最後の曲のネタもCHIYORIさんっていうシンガーがくれた曲で作ったのは覚えてますね。

– ISSUGIさんの場合好きそうなラインがはっきりしてるからなんですかね。

16FLIP – そうですね、親しい人からもらったレコードは気に入るパターンが多いですね。好きなのがばれてる感じで(笑)周りに音楽好きすぎる人が多いので、そういうのは楽しいし嬉しいですね。

– 今回のアルバムはトラックリストもオリジナルのものと変わっていますよね。

16FLIP – そうですね、やっぱり自分でアルバム作る時ってビートの並びが超重要なんで。だからビートが変わってるのにオリジナルと同じ並びだとダメなんですよね、自分の考えてるビートの順番じゃなくなってしまうので。まずは1曲ずつを作り上げていっているので、それがどういう順番に並べれば自分的にいいかっていうのを考えると、DJ的な目線も入ってきて、それでやるとこうなるというか。この順番で聴かせたら、自分が聴かせたいことが伝わるかなって。

– アルバムに流れがあるということなんですが、自分ではどういう流れのものになったと感じていますか?

16FLIP – Besが言ってたんですけど、昔よりポジティブなことを歌うようにしてると言っていて、オレもその考え方良いなと思ったので最終的にそういうのが伝わるような力をこのアルバムで与えられたらいいなと思ってますね。Besのラップってテンションが高めで、言葉の力もすごい強いし、そういうものを浴びて欲しいですね。オリジナルだと1曲目に入ってる曲が、ボーナスを抜いたら最後に入ってたりするんですよね。そういう違いも楽しんでもらえたらと思います。

– 構成は悩みましたか?

16FLIP – 14曲目をどこにいれようか考えていて、最後にいれるか最初にいれるかですごい悩んでましたね。こういう曲を最後にいれられたら自分的にすごい良い1枚になるんじゃないかなって。Besが1番好きなのは10曲目の”Jail”だって言ってましたね。あのリリックにメロウなビートを合わせたかったんで、上手くいって良かったなと思ってます。

– 先日のイベントYMWでも収録曲を自分でプレイしてましたよね。DJ 16FLIPがかけたいと思う曲にもなってるということですよね。

16FLIP – そうですね、自分はそうあるべきだなと、すごく強く思うようになって。やっぱり海外のヒップホップを紹介するだけじゃダメだなというか。それじゃ本当のヒップホップのDJとは言えないのかなって思って。おれも常にヒップホップをかけてる訳じゃなくて、好きな曲なら本当に何でもかけますけど、ヒップホップをかける時は自分が作った曲とかビートとかを、がっつりかけれるのがリアルなんじゃないかと思って。海外のDJがやるみたいにプレイ中、仲間とか自分の曲をかけたりしたときに、一番説得力を感じさせられるという体験が重要だと思うし、そこが曲以上の何かだと思うので。だから自然とそういう風になりますね。

– しかもプレイしていたUSの曲ともすごくハマってましたよね。

16FLIP – 嬉しいですね、自分の音楽の聴き方の基準がそこにあると思っているので。分ける必要はないし、分かれてはいけないと思うんですよね。US聴くときはこの価値観で、日本の聴く時はこの価値観でとか自分には一切なくて。自分の基準がひとつあってそこにひっかかるかどうかだけなので。前の質問の答えに戻っちゃうんですけど、ヒップホップを曲として紹介してるだけのDJより、おれは存在としてヒップホップのDJでいたいからってことですね。

– 他にヒップホップを感じるDJは誰がいますか?

16FLIP – BudamunkとかDJ ZONO(COCKROACHEEE’z)、DJ SHOE、DJ SCRATCH NICE、DJ GQ、FEBB、DJ SHIN-NO-SKEとかいっぱいいますね。

– 今回のアルバムにはリリックも追加してますよね。

16FLIP – オリジナルのアルバムの方にもフィーチャリングとして誘われていたんですけど、タイミングが合わなくてできなかったんですよね。だからオリジナルの時やろうって話だったから、サクッとリリックもいれようと思って。

– Besさんの声ってブルージーだと思うんですが、ビートはそれに合わせるんじゃなくて、乾いたものが多い印象なんですがこれは意識的にですか?

16FLIP – 特に意識はしてないですかね。感覚でこのビートがBesのアカペラに合うだろうってやっていってるんで、特に乾いたビートを作ろうとかはしてないですね。でもおれもBesにソウルフルでブルージーな感じとか重みとか感じるので、そのラップとの調和をしたくて、それを壊すんじゃなくて、やっぱり活かしたいですね。

– 今回のようにもともとあるアカペラに対してビートを作るのと、0からビートを提供するのでは全然違うものですか?

16FLIP – そうですね、ビートを提供するって話になると、どういうラップが返ってくるかわからないじゃないですか。そういうワクワク感があるんですけど、今回とかSEEDAくんのとかは、アカペラが用意されているんで、あとは自分の仕事というか、返ってくるものはないじゃないですか。だからそこは違いますね、自分が完成させるものなので。でもオレ1枚のリミックスアルバムを作るのとか好きなんですよね。しかも自分のアルバムと違うやり甲斐があるし。半分はおれがやって、半分はBesのラップなので、当然感じさせるものが違うというか。もっと普段よりプロデューサーの方に徹することができますね。あと自分で作ったビートでも、自分がラップしようとは思わないビートもどんどんできてくるので、自分の作品には使わないけどBesのラップにはバッチリ合うっていうビートもあると思うんですよ。そういう意味ではいろんなラッパーがいることで、自分のビートを聴かせられる楽しさはありますよね。インストで出すのとラップが乗るのでは違うと思うんで。

– インストだけの曲もありますよね。

16FLIP – これは元のアルバムから抜いて、こっからこの曲はいけないなっていうのがあるじゃないですかDJとかやってても。この曲からこの曲はかけれねえよ、だけどこの曲を挟むといけるっていうのがあるじゃないですか。そういうことをおれはこういうときにもやってて。9曲目のインストとかは、まさにそんな感じで。8曲目から10曲目は自分では並べたくないんですよね。でも9曲目を入れるとバッチリじゃんっていう。

– 確かにここの流れはすごい気持ちいいですよね。

16FLIP – それは嬉しいですね、それが伝わったらいいなと思っているので。DJもビートもラップも、結局やろうとしてること、自分が感じてる事が聴いた人に間接的に伝わればいいなと思っているので。今は3つ全部が自分の中でいい意味で混ざってきてるかもしれないですね。昔よりもっと単純になったというか、結局色んなことを分けてやっていても、1人の人間がやってることだから、感じさせてるものは同じだなと思って。それが言葉なのか音なのか、目から入る情報なのか、その人が放っている雰囲気なのかとかあるけど、同じエネルギーが元になってると思うんですよ。そういうものを自分の活動全体を通して感じさせられたらいいかなって思ってますね。

– 前はISSUGIと16FLIPが同一人物であることは明かしていなかったですよね。でも今はオープンになってきているのは?

16FLIP – それも、もちろん関係ありますね。自分がビートとラップで名前を変えてやりたいことは、ある程度できたわけじゃないけどやったし、もっと単純に簡単に考えていこうと思ったんですよね。つうか結局そういうもんだし(笑)でも名義を変えたのはやって良かったと思いますね。分けたことですごい得ることはあったし。

– 分けようと思ったのはどういう理由で?

16FLIP – それは両方のフィールドでガチで勝負したかったというか。ラップをやってるやつという情報なしで、ビートメーカーとして突っ込んでいきたかったんですよね。それが真剣にラップしてるヤツとビート作ってるヤツにたいしてのリスペクトでもあると思ってましたね。ビート作るのは、ついでなんだよねとかそういう感じではなくて、自分が出てきた事によって、今後はグルーヴがないビートメーカーとかの価値を無くさせようくらい内心思ってました(笑)。その時とかまだ全然誰にも知られてなかったから、アンダーグラウンドな世界なりに自分は他のヤツより秀でてる事を分からせないといけなかったし、MONJUの一つの要素として1人ビートメーカーがいるっていう方がいいんじゃないかと勝手に思ってましたね(笑)。あとは「耳だけで誰かちゃんとわかるの?」「姿を見ないと結局誰が作ってるかわかんないんじゃないの?」って聴いてる人の耳を試したいって思ってる意地悪な部分もありましたね。

– ラッパーとして最初に活動して、同じ名義でビートを作り出したらラッパーとしての評価もついてきてしまう。

16FLIP – そうです、そうです。例えばJ Dillaはラップもするじゃないですか、だけどJ Dillaのラップだけを評価する人とか余りいなくないですか?最初にビートを作ってるから。自分もDillaに対してそう思っちゃっているし。自分の話に戻るんですけど2005,6年頃とかは、ラッパーとしてもまだ全然評価されてなかったと思うし、自分の音楽を分かってくれるリスナーって日本にどれくらいいるのかなとか思ってたんですよね。そういう気持ちも当時あってラッパーと同じ名義で活動するのがすごい嫌だったというか、下手に情報を与えたくなかったのかもしれないです。ビートというもの以外で。だから「16FLIPってISSUGIさんなんですか?」ってきかれた時に「違うよ」って言った事10回くらいありますね。子供でした(笑)

– 僕も5~6年前くらいまでは一緒の人だというのは知らなくて、知ったときは衝撃でしたね。

16FLIP – (笑)。最終的にそういう衝撃を1回だけ与える前振りみたいになってましたね。

– 別のインタビューで9th Wonderのものだったりリミックスアルバムが好きだったっておっしゃってましたけど、今ってそんなにリミックスアルバム自体多くないじゃないですか。

16FLIP – ですね、だからNasimoto(Nas×Quasimoto)にすごい上がっちゃいましたね、ジャケットも面白かったし。DJでかけてます。あとリミックスアルバムも好きですけど、やっぱりプロデューサー1人で1枚っていうのがどうしても好きなんですよね。Dogearから今年でたILLNANDES&ENDRUNのアルバムも全部ビートがENDRUNなんですけど、自分名義(ENDRUN)のときと、またILLNANDESが選ぶ今回のビートのテイストが違うのが面白いし。例えると色って感じで、統一感があってプロデューサーの良さもでるし、ラッパーも渡されたビートから、さらに選んでるだろうから、そいつが好きなそのプロデューサーの色という感じで。誰が選ぶかで変わる。

– しかもプロデューサーとしても試されますよね、いろんなビートの引き出しがないと。1枚作っていく上で最初に全体的な絵が浮かぶんですか?

16FLIP – うーん作っていく上でですね。やっぱり並びとかはビートが超重要になってくるので。ビートがどんどん増えていって、作っていくうちに思い浮かぶ感じですね。それは全部作ってというより、5曲くらいの時点で並べ出しますね。あとラップが乗ってなくてもビートだけ集め出したりするんで、入れようと思っても入らなかったものもあるし。

– ビートのストックってどれくらいあるんですか?

16FLIP – 200くらいですかね。あまり人に聴かせたりとかもしなくて、自分のリリースがあったりオファーされたりとか何かがないと聴かすことがないので、すごいラフなやつとかもありますね。

 – 今もビートを作るのは早いですか?

16FLIP – 早いというか、長く時間をかけて作るのがあまり得意じゃなくて、集中してるうちに終わらせようって感じで早くやっちゃいますね。長くやってもいい結果にはあまりならなくて、もういじる所ないかなってなっちゃいますね。ダメだったら途中で消しちゃうし、ダメなトラックとかは残さないですね。

– あと今回のも『Roots & Buds』でもやっぱりレゲエっぽいビートが印象的なんですけど、自分のアルバムではそういうビートは使わないじゃないですか。

16FLIP – そうですね、偶然っていうのもあるんですけど、Besはレゲエが合うからってところで、はめこみましたね。SEEDAくんのときはたまたまそういうビートが好きだったんですけど。自分の作品のときは使っても、またちょっと違う印象を与えちゃうのかなって。おれとBesのラップのノリは違うし、同じレゲエを使ってても違うビートになっちゃうんですよね。”Check me out yo listen “って曲のレゲエのビートは自分が使うレゲエのビートではないなとか。おれが使う場合はもうちょっとローなレゲエで、Besはもっとダンスホールっぽいのを当て込みたくなるんですよね。

– それは自分の中でBesさん像が。

16FLIP – そういう部分があると思うんですよね、レゲエのDeejayと近いノリというか。ノリながらラップしてるっていう感じですね。上げる感じが有ります。

– 他に今回みたいなリミックスアルバムをやってみたいというラッパーって誰がいますか?

16FLIP – 日本人だったら5lackはやってみたいなとは思いますね。ラッパーによって返してくれるグルーヴが違うんで、ワクワク感が違ったりするので、面白いですね。

– 同時進行でやっているプロジェクトは?

16FLIP – Bes&Issugiでストリートミックスみたいなものを作っててそれが出ると思いますね。もう8曲くらい録ってて、あと1回レコーディングするくらいですね。Besと一緒にいると何故か自分のリリックを書くスピードが半端じゃなく速くなるというか。集まって、ビート聴いて、じゃあ書こうってなって、お互い30分くらいで書いて録ってみたいな。Besは尋常じゃなく速いですね、知ってる日本人ラッパーの中で一番書くのが速いかもしれないですね。そのスピードで書いたものが、みんな聴いてるものだし。だから一緒にレコーディングしてて面白いですね。勢いがすげーなって。

– 他にはありますか?

16FLIP – そうですね。自分が一緒に作りたいビートメーカー、ラッパーと毎月7inchをリリースしていく番組『7INCTREE 』も引き続きやっていて。一番近いのだとMr. PugのフリーEPを作ってて年内に出ます、あとMONJUも引き続きやってますね。DogearのレーベルとしてだとCramの作品をやってますね。Cramは凄いいいアーティストで才能を感じてます。そのアルバムの中の、半分くらいはラップが乗ったものになると思います。Cramはあまり日本人のラッパーとやっていないので、それこそBesとか乗せたいとおれは思ってますね。あと埼玉中心にずっと前から活動してる弗猫建物(ドルネコマンション)というクルーがいるんですけど、そのアルバムも出したいと思って動きだしてます。仙人掌も動いてるし、MONJUに集中するのはあともうちょっとだけかかりそうですね。

– みんな楽しみにしてると思います。

16FLIP – みんなにそれ言われるんですよね(笑)。そのたびに、やばいおれのせいだって気持ちになっちゃうんで、ちょっと頑張んなきゃいけないですね。

Info

LEXCD17015-JK

■アーティスト:16FLIP vs BES (ジュウロク フリップ ヴイエス ベス)
■タイトル:The Definition of This Word ( ザ デフィニション オブ ディス ワード)
■発売日:2017年9月6日(水)
■価格:2,200円+税
■品番:LEXCD17015
■JAN :4560230527174
■ジャンル:J-HIPHOP
■仕様:国内CD1 枚組
■レーベル:Manhattan Recordings

■購入リンク
・CD⇒ https://goo.gl/u9dhbu
・iTunes⇒ https://goo.gl/DMxg4t

【TRACKLIST】
1.16FLIP VS BES 1
2.16FLIP VS BES 2 FEAT.MEGA-G Cut by DJ SHOE
3.16FLIP VS BES 3 FEAT.SHAKU, 仙人掌 Cut by 16FLIP
4.16FLIP VS BES 4
5.16FLIP VS BES 5
6.16FLIP VS BES 6 (INST)
7.16FLIP VS BES 7 FEAT.ISSUGI
8.16FLIP VS BES 8 (DUB VERSION)
9.16FLIP VS BES 9 (INST)
10.16FLIP VS BES 10
11.16FLIP VS BES 11 FEAT.KING104,STICKY
12.16FLIP VS BES 12 FEAT.MICHINO Cut by DJ SHOE
13.16FLIP VS BES 13 FEAT.KNZZ
14.16FLIP VS BES 14
15.16FLIP VS BES 15(BONUS)

Source: FNMNL フェノメナル

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