さて、前回はブロックチェーンについて、僕の理解している範囲で説明したものの、「ブロックチェーンは音楽に密接に関わる話だ」と断言しておきながら結局ビットコインを例えに出したままで文字数オーバーとなってしまいました。
詳しくは前回分を読んでいただければと思いますが、ブロックチェーンの特徴として
・複数の参加者が作り上げる分散型の記録情報
・取引の全てが記録されている台帳のようなもの
・改ざんに強い
というようなことを挙げました。
つまりビットコインを始めとする仮想通貨市場というのは、そのブロックに「誰が誰にいくら送金したか」という情報を乗せ、それらを法定通貨(実際の各国の“リアル通貨”)を巻き込んで取引することでその価値が上がったり、下がったりしているわけです。
そしてこの「送金」情報を別のものに置き換えて考えることで、さまざまな分野で活用できる可能性が生まれる、と。
やっと本題の音楽の話に近づいてきましたよ。
今音楽業界でブロックチェーン技術と結びつくことで注目されているのは「著作権管理」です。
例えば自身の曲を登録することにより、その曲が「どこで誰に何回聴かれたか」という情報がブロックチェーンに蓄積され、同時に仮想通貨なり法定通貨(円など)で支払われる、というような仕組み。ライブハウスにShazamのような流れている音楽を自動判別してカウントするシステムを設置できれば(極端な話、iPhone一台でもできそうな気がします)、面倒な手続きや徴収された使用料が未配分のままどこかに埋もれる、ということもありません。音声認識による歌詞の解析と合わせればアレンジが違ったり演奏が多少下手でもかなり正確に楽曲管理ができるのではないでしょうか。
あるいは曲が完成した際に音源自体は非公開のまま登録のみすることによって、盗作などの問題が出た時にどちらが先に楽曲をつくっていたかを照会できる仕組みはどうでしょう。もっと突っ込めば作曲家、編曲家等の共同作業の過程を記録することによって「その曲の部分的な良さがどのクリエイターの作業によって生み出されたものか」をあとから知ることにも使えるかもしれません。そしてこれらはイラストやデザイン等の知財管理にもそのまま転用できます。
また少し音楽から離れてみましょう。
最近では大手住宅メーカーが、実際には土地の権利を有しない地面師に騙されて巨額な土地代金を騙し取られるというニュースがありました。改ざんに強く、オンラインでの照会が容易なブロックチェーン技術は土地の権利のような公的記録の管理にも有効といえます。海外では選挙に活用している例もあると聞きます。
ああ、なんて素晴らしいんでしょう。ブロックチェーン。ブロックチェーン万歳!
しかし少し冷静になって考えてみなければいけません。
音楽の再生数に応じた支払いはすでにApple MusicやSpotifyなど各サービスで行われていますし、ライブ演奏などに関してはJASRACがデータベースを一元管理してしっかり分配すれば済む話です。しかし「小さなバーや音楽教室での演奏に使用料を支払うべきなのか」といった話が着地しないことにはままなりません。
また、盗作の問題が出た際に「どちらの曲が先に作られたか」は照会できても「それが盗作かどうか」を判断するのは最終的には人の耳。オマージュと盗作の線引は?ブロックチェーンが直接トラブルを解決してくれるわけではありません。それでも情報の正確な管理、照会において社会に役立つ技術になることに変わりはないでしょう。「良い音楽をつくり多くの人が聴いてくれれば、それが自分に還元される」と多くの人が信じることができるのは素晴らしいことです。
結局どの分野の話をしても「優れた道具も技術も使う人次第」というところに落ち着いてしまうのかもしれません。そもそもの「良い音楽つくる」という部分で誰もが楽しみながらも悩み、苦しんでいるわけですからね。そこには暗号化も分散型管理も関与できない部分です。
やっぱ自分次第か~。
がんばります。がんばりましょう。
音楽プロデューサー・RAM RIDERの【朝までに送ります Vol.4】ブロックチェーン=ビットコイン?先端技術と音楽の意外な関係について(前編)
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