恵比寿LIQUIDROOMにて昨日行われた東京公演を皮切りに、京都、札幌、名古屋、大阪、高知、仙台、そして韓国・ソウルの計8都市で、行われるyahyelの2ndアルバム『Human』リリースツアー。超満員となった初日公演の最速レポートが公開!
Text:fukuryu (music concierge) Photo:Yosuke Torii
開演前、会場にはスネークマンショー“ミスター大平”の一節が流れていた。国内外を対比するブラック・ユーモアだ。衰退を辿る世界から見た日本という国。しかし、yahyelはインターナショナルにその価値を問いただす。自らが信じるブルースやロック、R&Bを解体し、テクノロジーを駆使してオンタイムなセンスで再構築していく。
アイデンティティーを模索する上で、皮肉を込めて宇宙人(※yahyelの意)とバンド名をつけた彼ら。この1年半での躍進の結果。アルバム・タイトルにも由来する“Human”としての身体性を得て、精神統一の境地をサウンドで体現する進化をみせている。小難しいワケではない、匿名性を剥いだ熱量の高い踊れるライブ・パフォーマンス。片時も意識を離さない途切れさせない高揚感の凄み。唯一無二、圧巻のサウンド・アンド・ヴィジョンだ。
オープニング、暗転すると山田健人(VJ)、大井一彌(Ds)、杉本亘(Syn)、篠田ミル(Sampling)があらわれた。そして、ステージ下からアジテーターでもある池貝峻(Vo)が登場。リヤスピーカー、サブウーファーを追加した空気が震えるサウンドに意識はロックオンされ、強烈な低音と繊細に刻まれたビートに合わせ、メンバー各々が肩を揺らす逆光に映えるシルエットが神々しい。
“I am a stranger”というフレーズが全てを物語る「Hypnosis」で本編スタート。鋭く重い音像、高音かつスモーキーな歌声が響き渡る。続いて「Acadia」の四つ打ちなイントロダクション。池貝によるステップ大きめなダンスがフロアを扇情する。アンコール含め全15曲。音像の美しさに意識を飛ばされる「Rude」など、聴きどころ、決めどころの多い展開や、絶妙にシンクロする映像に心は鷲掴みされていく。序盤、意外にも「リキッドルームへお越しの皆さん、yahyelです」とMC。後ろにいた女性客が「あ、yahyelって喋るんだ」と話していたのも印象的だった。
巡礼を想起させる「Polytheism」では印象的に鐘が響き渡るなど、SFを経由した宗教イメージをモチーフとしたサウンド・アプローチも象徴的だった。そして、オーディエンスの意識は「Once」、「Pale」をきっかけに覚醒。ハンズアップするフロアの至福な笑顔、たゆたう身体の揺れがたまらない。
トライバルなビートと耳に残るシンセ・フレーズが強烈な「Lover」後、ラスト1曲を前に池貝が珍しく長めに喋りはじめた。
「2年前、レーベルも何も決まってない頃。KATAで初めてリリース・パーティーをやって。(恵比寿LIQUIDROOM)上のエキシビジョン・スペースなんですけど。そこから2年が経ち、LIQUIDROOMでワンマンがソールドアウト(※オーディエンスが拍手)。ここまできました。なんか、……難しいバンドなんですよ。……個人的には“共感なんて全部クソ食らえ”って思ってやってきたんです。ずっと。……なんか、寂しかったんで。でも、なんだろうな。共感が無くてもいいと思うし。……ここまで、辛かったんですけど、今このステージ側に立って、自分が言いたいことを言うことに、これだけたくさんの方々が意味を見出してくれることは、もう共感云々ではなくありがたいことだと思っています。ここまで助けていただいた全ての方々に感謝したいです。ありがとうございました。……我々、志高き音楽グループ、yahyelなので。なんか“あの時、東京でライブしたね”って言えるようにしたいですね。」
このMCに、彼らのアイデンティティーが表されていると思う。人間への失望と希望。相反する感情を、音楽という神秘という名のロマンチシズムを持って120%体現しきった圧倒的なステージだった。
本編ラストは「Why」をプレイ。演奏が止まると同時にバンドロゴ“yahyel”がステージいっぱいに映し出され、ハッと我にかえった。匿名性を剥ぎ、より強固になった5人が奏でる多幸感に溢れたマインド・トリップ。新しいものが生まれる瞬間に立ち会えたことに喜びを感じられた夜だった。そして、国内ツアーは4月11日の仙台公演まで続いていき、その後4月14日には韓国ソウル公演が控えている。
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