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KiLLaインタビュー「自分自身の才能とかカッコよさだけで上がっていきたい」

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東京・渋谷を中心に結成されたヒップホップ・クルー、kiLLaが待望の1stフルアルバム『GENESIS』を1月24日にリリースした。

YDIZZY、KEPHA、Arjuna、BLAISEという超個性的なラッパーたち、そしてDJのNo Flower、ビートメイカーのacuteparanoia、さらにデザイナーのYESBØWYやYuki Nakajo、マネージャーのRYOSUKEの9名から成るkiLLa。そのハイブリッドな感覚から生み出される作品群は常に刺激的で、同世代の若者を中心に多くのヘッズを熱狂させている。もはやkiLLaは、ヒップホップという枠組みすら超越した、日本のミレニアル世代を象徴する存在と呼んでも過言ではないだろう。

そんなkiLLaに、記念すべきフルアルバムについてはもちろん、今後の野望などを聞き出すべくインタビューを敢行。大所帯のクルーから、Arjuna、BLAISE、No Flower、acuteparanoiaの4人が答えてくれた。

■Arjuna「ライブでオーディエンスが一緒に歌えることを一番に考えてる」

―まず『GENESIS』のジャケットアートワークが印象的でしたが、あれはどういったイメージで?

No Flower:周りからはよく“NEO TOKYO”とか言われてます。ちょうど知り合いにカッコいい絵を描いてる人がいたので頼んだって感じですね。

―「AKIRA」以外に、他のディストピア作品もお好きなんですか?

BLAISE:「北斗の拳」とか?(笑)好きですね。

No Flower:「GHOST IN THE SHELL」とか。

―『GENESIS』の冒頭から「エヴァンゲリオン」のサントラをサンプリングしていますよね。

BLAISE:俺「エヴァ」が一番好きかも。

―そういった作品で描かれている“荒廃した未来”的なビジュアルイメージというか、そういう退廃感や荒んでいるイメージを実際、現在の東京に抱いていたり?

Arjuna:そういうことは分かんない(笑)

No Flower:そこまでじゃないよね。ただ自分たちのイメージ。

―世界的に最近の若いラッパーは、モロにヒップホップどっぷりというよりも、それこそ70~80年代のパンクスのような要素も取り込んでいるように感じます。日本でも、特にkiLLaの皆さんからはそういったスタンスを感じるのですが、それもたまたま自分たちの好きなものを……

No Flower:融合させてったらそうなった? それは近いかも。

Arjuna:でも普段よく聴くのはTRAPですね。

No Flower:基本的にはみんなそう。その中で、それぞれ違う好みがあったり。

acuteparanoia:普通に音楽に詳しい人って感じかな、みんな。色んな音楽聴いてて、色んなジャンルから良いものを吸収して自分たちの音楽を作ってる。

―では最近よく聴いているアーティストは?

Arjuna:それは難しいなー! 

acuteparanoia:ひとつ選べっていうのは無理。色んな人が毎日たくさん出てくるから、毎日聴かないと(追えない)。

No Flower:TRAPですっげー分かりやすいところで言うならTravisとか。みんな好きでよくライブも見てるし。

―例えばLil Peepなどはオルタナ~インディーロック系の音をサンプリングしていますが、今作に収録されている「Rockstar」などには、同じようなオルタナっぽさやメロウなレイドバック感を感じました。

Arjuna:ああ、でも要はタイトルはリリックからなんですよ。

No Flower:そうだね、だいたい最後に(タイトルを)つけるから。

Arjuna:俺の場合、トラックを聴いて歌詞をバーッて書いて、メロディ付けて。で、そこにサビとかフックを付けたりとかも、その流れで自然に出てきて、最終的に「じゃあこの曲は“Rockstar”で」って。つまり後付け?

acuteparanoia:「Rockstar」って言葉がリリックにも出てくるけど、覚えやすいじゃないですか。だから曲名もそのまま。

Arjuna:ライブでみんな(オーディエンス)が歌えるように。俺はライブで歌えることを一番に考えて作ってるので。みんなが歌えて、かつ飛び跳ねながら歌える曲。ちゃんとビートに乗りながらも、キレイなメロディをつける。

■Arjuna「海外のお客さんは“楽しもう!”って気持ちが強い」

―kiLLaからは、90~00年代のヒップホップに強かった“マッチョ感”をあまり感じません。そもそも意識したこともないとか?

Arjuna:ないですね。なんでかって言ったら「それが俺たちじゃない」から、っていう(笑)

―わざわざ自分たちの中に無いものを演じることはない?

Arjuna:基本的には。でも、自分たちの中にある“何か”を増幅させて曲を書くことはある。やっぱり自己表現だから、自分たちが感じたことを……っすね。

―皆さんそれぞれ個性が立っているので、どことなくアニメ的な“チーム感”があるというか。それは、いわゆる日本の“オタクカルチャー”みたいなものとの親和性も高いんじゃないかな? と思いました。ヒップホップ関係なく、まずは強烈なビジュアル面から入るとか。

Arjuna:オタクカルチャーは世界に誇れるものだと思う。日本ではダサいと思われがちなのかもしれないけど。でも、何かしらひとつの対象に集中する力ってすごいと思うし、俺も結構オタク気質があるのかなって思う。

―フランスでもライブされてましたが、日本のカルチャーが人気のある国ですよね。どんな反応でしたか?

No Flower:すごい良かったっすね(笑)。みんなすごく盛り上げてくれるし。

Arjuna:日本人よりも「音楽が好き」「音楽を楽しもう」っていうマインドがすごいあるなって感じた。日本のお客さんも最高だけど、結構みんなシャイで。でも海外ではグイグイくる。

Arjuna:パリのお客さんたちも言葉が分かるわけじゃないし、俺たちのことを知らなくても「目の前のアーティストが良いパフォームしたら盛り上がるぜ!」みたいな感じのマインドで。楽しかったですね。

―海外のお客さんのほうが瞬発力がある?

Arjuna:そうですね、何も考えてないというか(笑)

No Flower:とにかく楽しんでる。みんなめっちゃ酔っ払ってたな(笑)

Arjuna:日本のお客さんは結構「どうしよう、どうしよう?!」っていうか……。

No Flower:なんか“小っちゃいパニック”が(笑)

Arjuna:でもライブしてるときはそんなこと考えてなくて、「ぶちかますぜ!」みたいな感じでやってるけど。

■No Flower「基本的にはビートを聴いて気持ちよくなれるかどうかを考えてる」

―1曲目以外はお二人がトラックを担当されていますが、「お互い違う音を」という意識はあったんですか?

No Flower:そもそものタイプが違うところもあるんで。

acuteparanoia:一応、曲順とかはいつも二人で相談してたので、どんな感じが足りないか? とかっていう話はしました。

―全体的にトラックはこのアルバムを意識して作ったんですか?

acuteparanoia:うん、そうです。

―総合的なイメージみたいなものはあったんでしょうか?「こういうのは避けよう」とか。

No Flower:ざっくりですね。ビートを集めて2人でまとめて、なんとなくのイメージだけ伝えて。あとはアーティストに任せて、もし「こっちじゃないほうが良い」ってなったら微調整して。できるだけやりやすいように。

―例えば「Murasaki」などは分かりやすく和な雰囲気が盛り込まれていますよね。あの曲を本編一発目に、っていうのは最初から考えていたんですか?

No Flower:1曲目に持ってこようと思ってたわけではないですね。

―話は逸れますが「ブレードランナー」とかお好きですか?

Arjuna:超好きです。都市の表現の仕方とサウンドトラックがマッチしてて、俺の出したい世界観と近いんですよね。けど、やっぱり外国人が思う“日本のイケてるところ”よりも、俺自身のほうが分かるじゃないですか、色々と。どう見せたらいいか? とか。

―リリックに関してですが、基本的には「俺のほうがスゲー」「見とけよ!」的な、いわゆるヒップホップのマインドもありつつ、どこか諦観にも似た気だるさも感じました。

No Flower:「どうでもいい」とかってわけではないけど……。

Arjuna:なんて言うのかな……自分のアルバムでは「日本のヒップホップを俺が変える」みたいな感じのフレーズはあったけど、そういうつもりで言ったわけじゃないっていうか(笑)

No Flower:ははは(笑)

Arjuna:「俺が変えてやるぜ!(熱)」みたいな、そういう感じじゃないんですよ。普通に「俺が変えるよ? 変えると……思います……」っていう感じなんだけど(笑)。俺が行きたいところはアメリカだし、ヒップホップそのものだから。別に日本のシーンは普通に変えるけど、そんな感じじゃないです、って(笑)

―そんなに言葉ひとつひとつに何か想いを乗せているというわけでもなく?

Arjuna:言葉であんまり表現したくなくて、自分のことを。なんか感性で見て、カッコいいって思ってほしいんだよね。

No Flower:そこまで「リリック重視!」って感じじゃないよね。

Arjuna:そうなんだよね。ただお客さんがライブで「うおー!」ってなるためにやってるっていうか。

―今作を聴くと、まずArjunaさんとBLAISEさんのラップがまず耳に飛び込んできます。低音のパンチがスゴいですよね、かなりワイルドな部分が……

BLAISE:ああ……獣(ケモノ)感?(笑)

Arjuna:俺ら兄弟だし、めっちゃ相性良くて。ベース系のビートを刻むっていうのがめっちゃ上手いんですよ、BLAISEは。で、俺はメロディを付けるのが得意だから。

NO FLOWER:トラックがシンプルでもBLAISEのラップが乗ってくると、それだけで1曲成立しちゃうみたいなところもありますよね、耳にも残るし。

Arjuna:やっぱ音にキレイにハマって、あと耳にスッと入ってくるような。ちゃんと音程に合ったきれいなメロディとかだと、結局耳につきやすいし。歌ったり、体も動かしやすい。

―ラッパー4名での役割分担じゃないですが、1曲の中でどういうふうに自分たちを配置するか? とかは決めていますか?

No Flower:曲によるかなあ。

Arjuna:基本的には、その場で聴いて、書いて、レコーディングして、そこでプロデューサー含めてみんなで軽く話し合いをして……って感じで作っていくかな。

―ソロ曲を聴くと、各々のソロ曲とも違う色を感じました。kiLLaの作品とは意識的に分けているところはありますか?

Arjuna:俺は全く分けてないけど、kiLLaの作品はいつもacuteparanoiaとNo Flowerのビートだから、その色に俺が混ざったバージョン。だからkiLLaの曲はkiLLaだけの曲になる。けどソロは、俺が「こういうのが良い」って思って見つけてきたものだから、自分の中だけの作り方になる。

―お二人のトラックでラップする時は、あえて歌モノとかにも挑戦してるのかな? と思ったんですが。

Arjuna:挑戦するとかって感じじゃないですね、自然とそうなったというか。

No Flower:でも結構メロディつける系になるビートが多かったかな、今回。(ラッパーが)自分でもう一個音を乗せるじゃないですけど、自由度が高いイメージではあった。

―「Slowdown」とか「Rockstar」は、そういう部分が特に印象的でした。あのウィスパーなラップはどなたが?

Arjuna:KEPHAかな?「Rockstar」は俺とYDIZZYですね

acuteparanoia:「Slowdown」はBLAISEとKEPHA。

―4人以外に他の誰かが参加してるんじゃないかと思うくらい、色んな声色が聴こえてきました。

Arjuna:自分のヴァースの後の余白を、自分の声を加工して埋めてるんですよ(笑)。曲を作る時に、じゃあここは普通のヴァースで、ビートに合わせて、で歌ってまた戻る。だからそういう動きを考えて……は、いないんですけど、感覚的に。もう染み付いてるものだから。

―今回は客演も一切なしですが、作っていく中で「いらなくね?」となったんでしょうか?

Arjuna:いや、最初から入れるっていう考えがまず無くて。

No Flower:まずは自分たちでやってみてっていうか、半分は分からないところがありながらも。誰呼ぶ? っていって、誰かの名前が出てくるわけでもないから。

Arjuna:客演したいアーティストいる? って言われても……

No Flower:うーん、ってなっちゃうから、自然と「じゃあ自分たちで」っていう。絶対に入れないとかって決めてるわけじゃなくて、タイミングかな。

―kiLLaには、日本のヒップホップにありがちな先輩後輩みたいな上下関係とかの外側にいるというイメージがあったんですよ。どこか醒めた感じというか。

No Flower:それは嬉しいなあ(笑)

―ですが、最後の2曲(「Nakama」「Ue Ni Iku」)はリリックにしても、クルーの絆というか繋がりを感じさせますよね。

No Flower:実際そういう曲を入れるかどうかっていうのは賛否両論あったんですけど……まあこれで最後って感じですかね。

Arjuna:「やってみようや~」みたいな(笑)

No Flower:次はもっと作品に寄ったものになると思います、メッセージもそうですけど。

―制作環境を海外に移したいという気持ちは?

Arjuna:いやあ、そりゃあもう……。

No Flower:それが一番いいよな。そうするつもりでいます。

Arjuna:ずっと日本にいようとは思ってないので。NYとかにみんなで住んで、そこで感じながら作ったものって、東京で感じて作ったものとは絶対に違うものになるから。

―シカゴとかはどうですか?

BLAISE:シカゴは……怖い(笑)

No Flower:ははは、南に行くとね(笑)

―海外の多くのラッパーが自身の地元のカラーを打ち出しますが、kiLLaもやはり東京もしくは東京や渋谷を打ち出していくんでしょうか?

Arjuna:なんか俺は「kiLLaとして」とはあんま考えてなくて、自分のワークを成功させるために。結局それがkiLLaの成功でもあるから。

Arjuna:たとえばYDIZZYがドカンと行けばkiLLaにも注目が集まるし、俺がそうなっても同じ。結局はひとりひとりの成功が重要だから、俺は俺のワークに専念してる。今は日本でやってるけど、例えばアメリカのラッパーと同じように、自分自身の才能とかカッコよさだけで上がっていきたいというか。

―いまやトラックメイカーもラッパーと同等かそれ以上に大きな成功を収めるようになっています。今後は外部へのトラック提供なども増やしていきますか?

No Flower:今後、ですね。

acuteparanoia:うん、まずはkiLLaのアルバムに集中したかった。個人の成功がkiLLaの成功につながるから。

―月並みですが、お気に入りのトラックメイカーは?

acuteparanoia:うーん、Clams CasinoとかANGELS、Metro Boominとかかな。

―ではソロ活動を含め、今後kiLLaとしての展望・野望を聞かせてください。

No Flower:kiLLaというよりは、みんなのソロの活動がメインになってくるのかな。

Arjuna:今回kiLLaでアルバムを作ったから、みんなソロ活動していきながらって感じかな。

―BLAISEさんはフルアルバムを作る予定は?

BLAISE:……作りません(笑)。

No Flower:ゆっくり作りたいんだよな?

BLAISE:1stアルバムになるし、完璧な内容にしたくて。

―ここ数年はアルバム単位というより、曲単位になってますしね。

No Flower:しばらくアルバムとかはなさそうだよね。それぞれ何かしらのムーブはありつつ、やりたいこともこれからどんどん変わってくと思うし。

Arjuna:やっと始まりって感じかな。

No Flower:そうですね、ここから。

kiLLa 1st Full Album「GENESIS」

1. Inception (Prod. DZA)

2. Murasaki (Prod. No Flower)

3. Faded (Prod. acuteparanoia)

4. Like This (Prod. No Flower)

5. Whole Lotta Gang (Prod. No Flower)

6. Late Night (Prod. acuteparanoia)

7. God Bless (Prod. No Flower)

8. Tokyo Haze (Prod. acuteparanoia)

9. XXX (Prod. acuteparanoia)

10. Slowdown (Prod. No Flower)

11. Rockstar (Prod. No Flower)

12. Nakama (Prod. acuteparanoia)

13. Ue Ni Iku (Prod. acuteparanoia)

Source: Abema HIPHOP TIMES

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