先月、中国政府がヒップホップに関する番組や刺青のあるタレントや歌手のテレビ出演を禁止したというニュースが報じられた。
しかし実情はヒップホップ全体の規制ではなく、PG Oneなど特定のラッパーへの規制ということはFNMNLの取材記事からでも判明している。
この1件についてBillboardに業界関係者のコメントが掲載されている。
Billboardは規制の渦中にいる中国音楽業界の関係者たちへの取材を行い、この件に対する彼らのリアクションをまとめている。
台湾を拠点とするダンスミュージック・エージェンシーのLOOP Incの共同設立者、 Alan Hsiaによると、今回の法整備はあくまで「”メインストリーム”のプラットフォームでのヒップホップの露出」を禁止したものあり、この規制はテレビ放送に限られるものだとしている。彼によると、ヒップホップは現在でも「巨大かつすごい速さで」中国のメインストリーム・カルチャーに影響を与えているという。
また、北京の音楽サービス会社OutdustryのA&R担当、Marcus Rowlandも同様のコメントをしている。「中国政府はヒップホップに対する『完全な抑圧』を目的としているのではありません。中国において政府はテレビ放送に関してとても大きな支配権を持っています。そのため、政府は最高レベルのメインストリーム・メディアであるテレビ放送においてヒップホップを不適切であるとしたのです。」
彼らが語るように、ヒップホップの規制の影響を受けるのはメインストリームのメディアに限られるようである。しかし、Kris Wuが共同プロデュースを行う『Rap of China』のように、中国でとても大きな人気を集めるインターネット番組たちも、スポンサーが離れてしまえば継続は困難になるだろう。Mao Livehouseの最高執務責任者であるDalongは『Rap of China』のシーズン2が放送されることになるかはわからない。」とSouth China Morning Postの取材で不安を示している。
また、プロデューサーのBilly Kohによれば、政府の今回の禁止令は主に『Rap of China』で有名になったアーティストたちを狙ったものであるという。「この動きは個人に向けられたもので、政府はPG OneやGaiといったアーティストを標的にしている。」と彼は話す。
OutdustryのMarcus Rowlandは「この禁止令は、私たちの多くがすでに知っていることを政府が公言しているようなものです。それは、『政府がヒップホップを低レベルな社会の一部分であると見なしていて、大半の人々にとってヒップホップは不適切なものだと考えている』ということです。」と、率直な意見も述べている。
中国ではテレビなどの主流メディアが大きな影響力を持っているが、Rowlandはラッパーたちがアンダーグラウンドでの活動に目を向け、ストリーミング・プラットフォームやオフラインでのイベントなどを通して深いつながりを持ったファン基盤を築いていくことを望んでいる。
(辻本秀太郎)
Source: FNMNL フェノメナル