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タイラダイスケ(FREE THROW)【生活と音楽 Vol.4】×アフロ(MOROHA)[前編]「生活」を紡いで完成するリリック

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情熱とアイディアを持って「生活」と「音楽」を両立させている人にフォーカスを当てて話を聞いていく対談連載「生活と音楽」。
第四回目となる今回はMOROHAのアフロくんに話を聞いた。

過去三回の連載では「仕事」と「音楽活動」を両立している人たちに話を聞いた。
だが、そういうスタイルで音楽を続ける人たちだけをフューチャーしていくと、
やもすれば一つの価値観のみを提示することになってしまうのではないか、と考えた。
それは本連載の意図することではない。なのでアフロくんに話を聞いてみたいと思った。
アフロくんが所属するMOROHAは現状、音楽での収入のみで生活を成立させている。
その背景にはどんな過程があったのか。またそこに至った現在、彼はどんな景色を見ているのか。

Interview & Text:タイラダイスケ(FREE THROW)Photo:おみそ

<MOROHA / 三文銭>


MOROHAの成り立ちとタイラとの出会いについて

タイラダイスケ(以下タイラ):今日はよろしくお願いします! 早速だけどMOROHAって何年やってるの?

アフロ:来年10周年です。

タイラ:来年10周年かぁ!今アフロ君って何歳だっけ?

アフロ:29っす。

タイラ:29!!

アフロ:差し迫りました。

タイラ:そうだね。でも初めてアフロ君と俺が出会ったのはもう7年前とか…?

アフロ:21とかじゃないっすか?

タイラ:そうだよね、21、2くらいかも。経ましたね~。

アフロ:経たっすね。でもタイラさん変わんないですよね。ずっとおじさん(笑)。

タイラ:いやいやいやいや、どんどん若返って、こんな黄色い帽子も被れるくらいなんで!(笑) そうかぁ、10周年。すごいね。最近はライブは年間何本ぐらいやってるの?

アフロ:100本弱くらいっすね。

タイラ:すごい本数だね。全国津々浦々って感じだよね。

アフロ:うん。そうっすね。

アフロ(MOROHA)
アフロ(MOROHA)

タイラ:元々出身はどこだっけ?

アフロ:長野県ですね。

タイラ:上京してきたのは何歳の時?

アフロ:18歳。高校卒業して、美容師の専門学校に進学して。

タイラ:じゃあ髪切れるんだ?

アフロ:資格は持ってます。

タイラ:なるほど。じゃあその学校の在学中にMOROHAは結成してるってことだよね?

アフロ:いや、それが違うんですよ。もうUK(※1)と一緒にやってはいたと思うんですけど、MOROHAって名前はついていなくって。その時はまだ他に地元にラッパーの仲間がいて、その仲間とクルーを組んでました。

※1 MOROHAのアコースティックギター担当。

タイラ:そのクルーの中にはUK君もいたの?

アフロ:UKはいないっす。あいつはあいつでシグマっていうビジュアル系のバンドをやっていて。

タイラ:そうだ、ビジュアル系のバンドやってたんだよね。で、MOROHAになったのはお互いのグループとかバンドが解散したのがきっかけで?

アフロ:そうっすね。

タイラ:一緒にやるかって言ったのが何歳?

アフロ:えぇとね、多分21か、20歳かな。

タイラ:じゃあ、おれがMOROHAと出会ったのは、本当にやり始めの頃だったってことか。

アフロ:まさにそうっす。元々MOROHAになる前はクラブでやってたんですよ。で、UKと「ちゃんとやろう」ってなったときに、「ちゃんとやるならライブハウスに出よう」ってUKが言ったんですよ。クラブは持ち時間が10分とかしかなくて短くて。あと深夜だとなかなかお客さんが来てくれないし、持ち時間30分やるってことで僕らも曲を作ろうって気持ちになるだろうしってところで、ライブハウスでやるようになって。

アフロ(MOROHA)

タイラ:なるほど。

アフロ:で、オーディションライブを受けに行って落ちたり、出れてもノルマを背負って出ていて。で、SSWS(※2)ですよ、それこそ。で、MARZ(※3)と出会って、タイラさんですよ。

※2 SHINJUKU SPOKEN WORDS SLAM。新宿MARZで定期的に開催されていたことばと声を使った表現者を集めたトーナメントイベント。

※3 新宿MARZ。タイラが過去店長・ブッキングマネージャーを務めたライブハウス。

タイラ:そっかそっか。そうだよね。企画もMARZでやってくれて、SEBASTIAN XとTHEラブ人間とスリーマン。あれ初企画じゃないかな?

アフロ:あれはね、初企画だったかなぁ、リリースツアーのファイナルみたいな感じだったんですかね。

タイラ:あれってROSE RECORDS(※4)から1stアルバムが出た時?

※4 曽我部恵一氏の主宰する日本を代表するインディーズレーベル(http://rose-records.jp/

アフロ:そうっすね。1st出たとき。

タイラ:なるほど、懐かしいね。ものすごくいい日だったよね、あの日。12月の頭くらいだった気がする。

アフロ:クレヨンで手作りのポスター描いた気がする。覚えてます?

タイラ:覚えてる覚えてる!描いてたね!

「俺、音楽で生きていきたいって本当は思ってる」

タイラ:ここからちょっと踏み込んだ話を聞かせてください。専門学校の間は、仕送りをもらったりとかしてたのかな?

アフロ:奨学金とバイトですね。洋服屋さんでバイトしてたんすよ、その時は。で、その後に、卒業してから美容師になるっていう選択肢も無きにしも非ずだったんですけど…。でもね、2年間学校行ったのに全然やりたくなくて(笑)。 で、親にそれを話したら、「大学4年行かせたと思うことにするから、2年間好きなことやってみろ」って言われて。俺はね、サラリーマンになったんですよ。

タイラ:そうなんだ!サラリーマンは2年間やったの?

アフロ:えっとねぇ、1年くらいかなぁ。最初の1年くらいピンポン営業。本当にマンションとか行ってピンポンして。

タイラ:飛び込みで。

アフロ:「あの、ADSLもしかして繋いでないっすか?」みたいな。そういう感じで行って、契約を取りにいくっていうような仕事だったんです。それをやりながらMOROHAをやっていたんですけど…その時俺は音楽を仕事に出来ると思ってなかったんですよね。サラリーマンの時の仕事のモチベーションは「その会社で営業成績一位になること」だったんですよ。で、実際俺は一位になったんです。でも、一位になった瞬間にモチベーションが落ちちゃって。もう追いかけるものがないから全然やる気がなくなっちゃって、すごい情けない形で仕事をやめて。

タイラ:そんな事があったんだね。

アフロ:で、そこからどうしようと思って、食いつなぐためにコンビニで働いたりとか、また前に働いていた洋服屋さんで少し働いたりしてたんですけど…でもそんなことしてる間に、親と約束した2年間がもうあと半年くらいで終わっちゃう、と。「俺は何をやってるんだろう?」となった時に、「現実的かどうかは別として、一番やりたいことは何だ?」自分自身にバッと向き合って、「俺、音楽で生きていきたいって本当は思ってる」と思ったんです。「じゃぁ残り半年間だけでいいから、音楽で飯を食うんだってみんなに宣言して、本気でやってみよう」って思って。そのタイミングでUKにもそれを伝えたんです。その気持ちで頑張っていたら、半年後くらいにちょうどCBS(※5)のやつらと一緒のイベントに出て、ROSE RECORDSの人の手元にCDが渡って、ROSEから出そうって話になったんですよ。

※5 日本のHIP HOPグループ(http://pistachiostudio.net/

<CBS『Undercurrent』>

タイラ:ギリギリセーフだったんだね。

アフロ:ギリギリセーフだったんですよ。で、親に「もう2年になったけど、あんたどうすんの」って言われたときに「いや音楽やりたいんだよね」って言って。「何バカなこと言ってんの」って言われたんですけど、「いや、CDが出るんだよ」って言えたことでちょっと延長出来た。

タイラ:なるほど、「頑張ってるのね」っていう風な理解を得られた。

アフロ:そう。田舎の人は「CD出してたら神様」だと思ってるから。

タイラ:(家族が)何十枚か買って周りに配っちゃうみたいなやつでしょ?

アフロ:そうそう。「タワレコに並ぶの!?」みたいな。まさにそんな感じだった。

タイラ:なるほど。「サイン沢山書いて!」みたいな。

アフロ:そうそうそうそう。

<MOROHA『恩学』>

「俺はMOROHAっていうチームの営業マンになった」

タイラ:そのタイムリミットの半年前に自分に向き合って「俺音楽をやっぱやりたい」って思ったときは、音楽で食えるとか何にも思ってなかったわけだよね。

アフロ:思ってなかった、思ってなかった。

タイラ:その時は自分的にどういう気持ちだったの?「あぁ、現実味のない気持ちに気付いちゃったなぁ」みたいな感じ?

アフロ:えぇと、その時期にプライベートで「あ、人生って思いもよらないことが起こるんだなぁ」って思うようなある出来事があって。だから、やりたいことやらなきゃダメだなーって。どんだけ「計算立てて安全に安全に」ってやったって、そんなに全部上手く行かねぇんだって思ったところはありました。

タイラ:なるほど。そういう事があって、ある種のリミッターみたいなものが外れたってところがあったんだね。で、半年後にCDが実際出て、親も納得してくれて。でも、それですぐ音楽だけで生活できるようになったわけじゃないよね?

アフロ:ないですね、働いてましたね。

タイラ:その後はどんな仕事を。

アフロ:ラーメン屋と、深夜の漫画喫茶っすね。

タイラ:掛け持ちして。そうだよね、今だから話すけどMARZのライブの後にバイト行ったりしてたもんね。

アフロ:してましたね。だから漫画喫茶は深夜。ラーメン屋は10時から14時。これどういうことかって言うと、ちょっとでも空きがあって3日前とかの連絡で「ライブする?」って言われた時でも、ライブの時間帯だけは絶対にバイトが入ってないからすぐに「やります!」って即答できるっていう。

タイラ:なるほどなるほど。いつでも出れる。

アフロ:ライブにいつでも出れるっていう状況を作ろうと思って、そのバイトは選んだんですよね。

タイラ:UK君も同じようなバイトだったの?

アフロ:UKはその時はね、アイドルの写真の鼻毛とかニキビを消す仕事をしてた(笑)。そういうのは自分のペースでやれる仕事だから。

タイラ:なるほど。現状の話しをすると、今はバイトはしてないの?

アフロ:してないすね。

タイラ:いやらしい質問だけど、バイトはいつまでしてた?今が29歳だよね。

アフロ:えぇとね、27歳の6月だから2年前。

タイラ:それそんなに明確に覚えてるんだ。

アフロ:調べたらすぐわかるんですけど、俺「しゃべくり007(※6)」に出たじゃないですか。あの、生田斗真君の時の回。2015年の5月いっぱいで俺はバイト辞めてるんですよ。で、そのバイトを辞める3日、4日前にしゃべくり007の放送があったんですよ。で、辞めたんじゃなくて厳密に言うと実はそのバイト先が潰れたんですよ。その時にまぁ「しゃべくり007できっとブレイクするだろう」という気持ちと、あとバイト先が潰れたっていうタイミングはなにかこう…。

※6 日本テレビの人気番組。MOROHAは2015年6月1日放送回に生田斗真さんの紹介という形で初登場している。

タイラ:踏ん切りがついちゃった?

アフロ:だろうなーと思って。辞めましたね。

<MOROHA『tomorrow』>

タイラ:ちょっと話が前後しちゃうんだけど、22歳とかの時はラーメン屋と漫画喫茶でしょ?その後はどういうバイト遍歴?

アフロ:あぁもうずっと同じっすよ。24歳くらいからやったのかな。ラーメン屋はね、さすがに体力的にキツかったりとか、ちょっとずつだけど音楽の収入が上がって来たので、先に辞めました。

タイラ:で、漫喫が潰れてってことだね。それはもうテレビも出れて、何か神の思し召し的なものだと思ったというか?

アフロ:そうそう、間違いない。

タイラ:で、バイト辞めて。そこからは結構順風満帆ていう感じ?

アフロ:そう…ですね。

タイラ:完全に音楽で稼ぐぞっていう感じになったのかな?

アフロ:でもね、完全に稼ぐぞって気持ちは結構前からあって…ずっとあったっすね。

タイラ:バイト辞めたことで音楽に専念出来る気持ちとか時間とかは増えたって感じ?

アフロ:うん。あの、それこそ、実は「しゃべくり007」の2015年の6月に、もう一回働かないとやばいかな?ってギリギリの経済状況だったんですよね。正直バイトの収入がなくなったらギリギリ足りないみたいな。じゃぁどうする?働こうか?って迷ったは迷ったんですけど、サラリーマンやってた時の記憶がぱって戻ってきて…結局、自分が本当にいいと思ったものを売っているならまだしも、人から売らされてるものを売っているってなってくると、どうしても俺の中で矛盾が生まれちゃうというか。

だったら自分が力いっぱい作って、心血注いだものを一生懸命売るための時間にした方が良いんじゃないかっていう風に思ったタイミングでもあったんです。で、その日から俺は音楽で食い始めたとは言うものの、「MOROHAっていうチームの営業マンになった」っていう日でもあるんですよね。で、俺はそこからどこで誰に会うかわからないから、本当にずっと…コンビニに行く時とかもポケットにCD入れて。それはもうずっと前からやってたことなんですけど。新しいCDが出来たらすぐメッセージ付きで送って、関係者見つけたら「あのフェスいつ出してくれるんですか!?」とか。

そういうことをやるっていうのは、アーティストによっては良しとしない人もいるかもしれないけど、ことMOROHAの音楽に関しては(その経験が)全然歌詞の種にもなるし。ピンポン営業でADSLを断られた時よりも、自分達の音楽が届かなかった時の方が心が落ち込むじゃないですか。でもそれって自分たちが受けるべき傷だっていう風に思えるんです。仮に、こういう営業を俺の代わりに事務所の誰かがやるとしても、やっぱりそれって俺が受けるべき傷なのに、人にやってもらってるってことでしょ?って。だったらやっぱり現状のこの状況を見ても「全部俺がやった方が良いだろ」っていう結論に達したんです。

<MOROHA『それいけ!フライヤーマン』>

タイラ:じゃあ感覚的には、音楽だけをやって収入を得るぞっていう感覚よりも、「MOROHAに就職した」みたいな感覚なのかな。自分がやっているMOROHAっていう商品を自らの手で売るぞっていう感じ?

アフロ:うん。でもそれも俺にとっては作詞作業のひとつだから。CD渡しに行って無下にされるのも俺の作詞作業だし。

タイラ:そういう経験がどっちにもフィードバックされるってことだよね。それは最初からわかってやってたの?それとも途中で気付いたの?

アフロ:最初からわかってたっすね。幸いにして俺には「リリックっていうのは人生のことだから」っていう風に教えてくれる先輩のラッパーもいたし、だからすごく有難いことだなと思います。

アフロ(MOROHA)

(後編に続く)

PROFILE

moroha

MOROHA

アフロ[MC] | UK[Gt]

2008年結成。
舞台上に鎮座するアコースティックギターのUKと、汗に染まるTシャツを纏いマイクに喰らいつくMCのアフロからなる二人組。
互いの持ち味を最大限生かす為、楽曲、ライブ共にGt×MCという最小最強編成で臨む。
その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。
相手を選ばず、選ぶ筈が無く、「対ジャンル」ではなく「対人間」を題目に活動。
ライブハウス、ホール、フェス、場所を問わず聴き手の人生へと踏み込む。
道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽をかき鳴らし、賛否両論を巻き起こしている。
雪国信州信濃から冷えた拳骨振り回す。

WEB:http://moroha.jp/

PROFILE

タイラダイスケ(FREE THROW)

タイラダイスケ(FREE THROW)

DJ。
新進気鋭のバンドと創り上げるROCK DJ Partyの先駆け的な存在であるFREE THROWを主催。DJ個人としても日本全国の小箱、大箱、野外フェスなど場所や環境を問わず、年間150本以上のペースで日本全国を飛び回る、日本で最も忙しいロックDJの一人。

<レギュラーパーティー>
毎月第二土曜日@新宿MARZ「FREE THROW」
毎月第四金曜日@渋谷OrganBar「Parade」
毎月第一&第三水曜日@赤羽Enab「Crab」

WEB:http://freethrowweb.com/
Twitter:https://twitter.com/taira_daisuke?lang=ja
Instagram:https://twitter.com/taira_daisuke?lang=ja

Source: https://sams-up.com/feed/

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