新モンスターとして選出されたFORK。神奈川を代表するヒップホップ・グループ:ICE BAHNのメンバーとしては勿論、フリー・スタイラーとして「UMB」2006の優勝をはじめとして、記憶に残る名勝負を数々生み出し、00年代のバトルの一つの頂点を築いた存在と言っても過言ではないだろう。ダンジョンにも審査員、隠れモンスター、チャレンジャーとして参戦し、新モンスターとしてこれからそのスキルを更に視聴者に提示することになるであろう彼に、その意気込みを聞いた。
―最初にダンジョンに登場したのは審査員としてでしたね。
FORK:それまでの審査員だった1人が抜けて、そこをゲスト審査員にしていくっていうタイミングで拙者に声がかかって
―「拙者」(笑)。それが最初のダンジョンとの関わりと。ダンジョンの審査はいかがでしたか?
FORK:勝敗は自分で決めるんだけど、解説が正直、全然要領が分からなくて、どうしたもんかなと思ってたら、両サイドに座ってた、いとうせいこうさんとLiLyがめちゃくちゃびっしり試合内容をメモってたんですよね。
それで、コメントを求められた時は、それをカンニングしながら話してました(笑)。その収録回が、崇勲がラスボスまで到達した回(2ndシーズンREC1)だったんですよね。そこで久々に般若さんのバトルを見て
―般若さんとFORKさんは00年代には幾度となく戦ってますね。
FORK:俺が生まれて初めてバトルした相手であり、負けた相手が般若さんだったんですよ。2001年の「B-BOY PARK」、予選の一回戦でしたね。02年の本戦でまた当たって負けて、03年にベスト8で当たった時は勝ったんですけど、その後にゴタゴタが起きて・・・
―ICE BAHNと妄走族が一触即発になるという・・・
FORK:で、それから10年以上経って、崇勲と般若さんの戦いを見た時に、般若さんの昔と変わらない熱量にスゴい食らったというか、感動に近いモノを感じて。あれから15年近く経ってるのに、まだ20代前半の頃の熱をキープしている事に、自分もスゴく熱くなったんですよね。俺はバトルに対しては、2006年にUMBで優勝してから、結構距離を置いてたんですけど、そのバトルを見て「このままで俺は良いのか」ってぐらいまで考えさせられて。
―06年までのFORKさんやICE BAHNはとにかくバトルに出まくってたし、常勝軍団でしたよね。
FORK:ただ、そもそもバトルをしたかった訳じゃなくて、当時はSNSもなにもない時代だったから、どうやって自分たちの名前を上げるか、名前を高めて週末のイヴェントに出演者として食い込めるかっていう道筋の一つとして、「B-BOY PARK」や「UMB」っていうバトルは大きかったんですよね。
それで「やるしかないでしょ」っていうのがバトルに出るモチベーションだった。それでICE BAHNとしても「3on3 MC BATTLE」で優勝したり、俺自身も2006年にUMBで優勝した事で、確実にフリースタイラーとして日本一になったと思えたし、バトルを見てる人、ヒップホップが好きな人なら俺らのことを知ってるでしょ、って。そうやって目的が達成できたんで、そこで距離をおいたんですよね
―事実、その後は「ENTER」などに出ましたが、それはエクスクルーシブな形ではありましたね。ただ「ダンジョン」には審査員に続いて、ICE BAHNとしても出場されますね。
FORK:裏話をすれば、最初はFORKソロとして隠れモンスターか、ICE BAHNとしてチャレンジャーの両方、って感じだったんですよ。それだったら、俺はソロ・アーティストでなく、ICE BAHNのメンバーだから、チャレンジャーとして出してくれって」
―ただバトルで「求められるもの」だったり、状況も変わっている部分もあると思うし、有り体に言えば10年の「ブランク」がありますよね。
FORK:でもやっぱりバトルは気にはして見てたし、ICE BAHNとして現場には立ってたから、ラップを辞めてた訳では無いんで、ラップ自体には当然だけどブランクは無くて。それに、確かに俺らはバトルからは遠のいてたし、バトルでバリバリ戦ってた頃の事を知らない奴も多いかも知れない状況だとは思うけど、それでも声がかかったんなら、やってみようか、っていうのは思いましたね。
なにより、バトルのオファーを貰って、断る方が男として恥ずかしいっていうのもあって
―実際に出ての感触はどうでしたか?
FORK:やる前はやっぱり面倒だな~って感じだったんだけど(笑)、やったらやったで楽しかったっすね、毛穴が開くっていう。そして俺らがやってる時とは比較にならないぐらいの広まりと規模を感じましたね
―そして隠れモンスターとしても、「パンチラインフェチズ」として出場したNAIKA MCと戦います。
FORK:ICE BAHNとして出た直後に隠れモンスターのオファーを貰って。そこでは、オーディエンスの感覚も変わってるんだっていう感触がありましたね。10年も経てば当然なんだけど、俺らの知ってる物差しとは変わってきてるなって
―それはどの部分ですか?
FORK:『お前のスタイルが王道になっちまうんだったら/今後バトルの熱は相当冷める/それが正義だっていうヒップホップシーンなら/俺が抜いた刀をそっと収めるよ』の部分ですね
―そのパートは、「相当冷める」と「そっと収める」という韻の硬さと同時に、いまのシーンに対するメッセージにもなっていて、かなり話題になったと思うんですが。
FORK:自分でも「キレイに出せた!」って思いましたよ(笑)。でもそれに対して、NAIKAが「じゃあ収めて帰れよ」って返した瞬間に、俺の時よりも観客が明らかに沸いたんですよね。切り返しだったっていうのもあるけど、その盛り上がりが、自分の考えてる物差しとはちょっと違って、それでちょっと心が折れた部分がありました、正直。今はこういう感じなのか、って
―韻の硬さよりも、言い切りの部分に沸く流れというか。
FORK:もちろんNAIKAはそういう流れにアジャストしてるんだと思うし、それも正解だと思うんですよね。悪いとは全く思わない。だけど、求めてる尺度がオーディエンスとは違うと思ったし、観客の盛り上がりから感じる物差しの違いや温度差には、ちょっと考えさせられる部分でもあって
―ただ、あのラインは、その場で気づいた人もいましたけど、瞬時に理解するには、高度過ぎたのかなと。だから後々の方が話題になった感触がありますね。
FORK:だとしたらそれは思惑通りですね。自分としても結果としては負けたけど、後々にスゴく反響を感じたし、内容として間違ってなかったなって。ラップって、あとで気づいた方が絶対ヤバいと思うんですよ。
「ここで踏んでます」とか「ここがダブルミーニングになってます」っていうのが、分かりやすければ分かりやすいほど、俺には興味ない。それよりも、あとで「うわ、あそこ踏んでたんだ!」みたいに気づくラインに俺はやられたし、形にしたいんですよね。オーディエンスにもそういう部分を自分から探して欲しいし、そうなって欲しい
―分かりやすい刺激物ではなく、じんわりと効いてくる「味」というか。
FORK:その意味でも、まだオーディエンスにも伸びしろがあるのかなって思うんですよね。FORKみたいなスタイルもあるんだって事を気づいて欲しいし、俺もそのスタイルを愚直に貫きたい。そして、それによってもっと注意深くラップを聴いてもらえたり、能動的な姿勢になって貰えたら、俺のスタイルの勝ちかなって思いますね
―それを「ダンジョン」でも貫くと。
FORK:そうですね、同時に韻に加えて、その先も提示出来ればなって。
俺が何を言うか、どういう筋の通ったラップをするかっていうような、ライム至上主義って言ってる俺が、誰よりも話の筋を通していく姿勢を見せることが、これからやらなくちゃいけないことなのかなって。
その意味でも、韻の数や硬さの「その先」を形にしたい。新モンスターとして、恐らく負ける事もあるし、生き恥を晒すかも知れないけど、それも覚悟の上でやっていきたいですね
Source: Abema HIPHOP TIMES