こんにちは。映像演出家スミスです。
ロケで10年ぶりぐらいに北海道、札幌へ行ってきた。やっぱり別格の寒さだった。出演者もさることながら、慣れないスタッフ(自分自身も含めて)にはなかなかの難敵である。いつも以上にワンカットにかける時間が短くなっていく。撮る前に最小限の選択肢を必死に考えるようになる。帰って編集してみたが、使いどころぴったりの効率の良い素材となっていた。出来上がりはいつもと変わりないが、ねらいがズバズバ当たっている気がして、気持ちが良いものである。この仕事、無駄か無駄でないか、難しい。
前回の続き。
依頼を受けて、ばってん少女隊「MEGRRY-GO-ROUND」のミュージックビデオを演出することになった。テーマは「脱かわいい」。それまでの元気で勢いたっぷりな楽曲から、ちょっとしっとりしたバンドサウンドへ変化したこともあるし、彼女たちの新しい魅力を探るためでもある。若い彼女たちは変化が激しい。前回の手法が必ずしも有効とはいえないし、別の角度から光を当ててみることで、全く違う「才」を捉えることができるかもしれない。
でも一番大事に思っていることは、自分自身が前回までの手法に飽きているということだ。もっと違うものを観てみたいという好奇心。彼女たちの変化を感じたいという素直な気持ちと、新しいものを生み出したいという「もがき」が、作品を変えていく。
今までの撮影では、勢いを表現するためにハンディカメラワークを多用していた。ハンディでの撮影は、画面が刻一刻と変化するために、常に観る人の感情を刺激し続けることができる。それくらい刺激的なものを作りたかった。
しかし今作は、「動」ではなく「静」の空気感から不思議な美しさを感じさせようと試みた。画面は三脚にすえたFIXの画をメインのアングルにした。幾何学的なマンション群を背景とし、その前でマネキンのようなダンスを踊る。カメラに媚びることない、クールな世界観で、観る人の発見を誘発する。さらに止まったアングルにこっそりと逆回転だったり、人を入れ替えて観たりと違和感を仕込んでおく。そうするとはっきりと認識しなくてもどこか気になってしまう。重ねていくことで、どんどんと不思議な世界を構築していく。上品になりすぎないように、ところどころ世界観をずらしたカット(例えば)も入れて、アイドルらしいキッチュさも大切にした。
完成した作品は、ばってん少女隊にとって今までにない仕上がりになったと思う。さて次回はどうするか、そんなことを考えるのが一番楽しい。
さて、今回の質問です。
何度も読み返す本や、繰り返し観たくなる映画は何ですか?(匿名年齢性別不詳)
とにかく忘れっぽいので、一度観た映画でも面白いという感覚だけを残しながら、新鮮な気持ちで観ることができますね。不思議なんですが、映画は繰り返し見ても感じ方はそんなに変わらないんですが、本はどんどんと印象が変わっていきます。文章っていうのは自分を通して、もう一度「映像」を構築しているのかもしれません。
「BE-BOP HIGHSCHOOL 高校与太郎哀歌」を観直すのが好きですね。あと、トトロ。
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