block.fmで毎週月曜日22時から配信されている「INSIDE OUT」にて、音楽ライター・渡辺志保とDJ YANATAKEがグラミー賞におけるヒップホップ・アーティストの扱われ方について深い議論を交わした。
60回目を迎える今回のグラミー賞では、ジェイ・Zが最多8部門(最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞、最優秀ラップパフォーマンス賞、最優秀ラップ/サング・パフォーマンス賞、最優秀ラップ楽曲賞、最優秀ラップアルバム賞、最優秀ミュージックビデオ賞)、ケンドリック・ラマーも7部門にノミネートされた。しかしフタを開けてみると、ジェイ・Zはなんと無冠。ケンドリック・ラマーは5つのトロフィーを手にしたものの、主要賞は逃した。
二人はブルーノ・マーズが主要3部門(最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞)を独占したことに異論はないという前提で「なぜヒップホップ・アーティストはグラミーの主要賞を獲れないのか?」について議論。過去にグラミー主要3部門を獲得したヒップホップ作品は、アウトキャスト「Speakerboxxx/The Love Below」だけ。グラミー賞やアカデミー賞はマイノリティを冷遇していると言われ続ける中、昨年はアカデミーでオール黒人キャストの映画「ムーンライト」が作品賞を受賞し、ヒップホップの売上がロックを超えたというニュースも話題になったこともあり、2人はジェイ・Zかケンドリックのどちらかが主要賞を獲と期待していたようだ。
今回の受賞結果を受けて、渡辺が「アメリカではヒップホップが流行っていると言われているけど、マスな部分には食い込めてないというのが現状なんです」と話すと、YANATAKEも「もちろんこれはグラミーに限ったことで、これでヒップホップの勢いが落ちるとかそういうことではないのは承知してるけど、ただ気持ちとしては(ヒップホップアーティストが)主要賞を獲って欲しかった」と本音を漏らした。
これに渡辺は「グラミーの選考委員は保守的すぎると思う。私が思うに今年はさまざまな種類のブラックミュージックをノミネーションすることで人種の多様性を表現したから、主要賞にジェイ・Zやケンドリックを選んでしまうと政治的すぎなんじゃないか? って思っちゃったのかなって」と分析。さらに「私はジェイ・Zの『4:44』もケンドリックの『DAMN.』もトランプが大統領になった2017年に、アフリカン・アメリカンでしか作り得なかった作品だと思う。だから、(2人のどちらかが受賞して)そういった時代性が(授賞式で)もうちょっと語られても良かったかな、と思う」と締めた。
JAY-Z – The Story of O.J.
URL: youtu.be
Kendrick Lamar – LOYALTY. ft. Rihanna
URL: youtu.be
★ジェイ・Zとケンドリック・ラマーのノミネート一覧
最優秀レコード賞
JAY-Z『The Story Of O.J.』
ケンドリック・ラマー『HUMBLE.』
最優秀アルバム賞
JAY-Z『4:44』
ケンドリック・ラマー『DAMN.』
最優秀楽曲賞
JAY-Z『4:44』
最優秀ラップパフォーマンス賞
JAY-Z『4:44』
ケンドリック・ラマー『HUMBLE.』
最優秀ラップ/サング・パフォーマンス賞
JAY-Z Featuring Beyoncé『Family Feud』
Kendrick Lamar Featuring Rihanna『LOYALTY.』
最優秀ラップ楽曲賞
ケンドリック・ラマー『HUMBLE.』
JAY-Z『The Story Of O.J.』
最優秀ラップアルバム賞
JAY-Z『4:44』
ケンドリック・ラマー『DAMN.』
最優秀ミュージックビデオ賞
JAY-Z『The Story Of O.J.』
ケンドリック・ラマー『Humble.』
Source: Abema HIPHOP TIMES