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【特集】ヒップホップマナーを取り入れた演劇ユニット「東葛スポーツ」主宰・金山寿甲による名曲10選

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フリースタイルダンジョン以降に発生した“ラップ”ブーム以前から、“ヒップホップ”カルチャーへの偏愛を盛り込んだ演劇が、ここ数年間行なわれているのはご存知だろうか?

“ヒップホップ流の了見でアウトプットする演劇ユニット”と称する東葛スポーツは、都内の小劇場やアートスペースを中心に公演を行い、サングラスを掛けた劇団員に時事ネタを盛り込んだ、異様にアツいラップをスピットさせる。過去の公演のリストからわかるように、音楽への愛情表現が非常に激しいのが特徴だ。

昨年末に六本木・スーパーデラックスで行われた本公演『ハウス』も妙な熱気を帯びていた。冒頭、会場内に吊るされたスクリーンに映されるのは、ホームドラマの名作『寺内貫太郎一家』。そこから映像はハウスミュージックの聖地・パラダイスガラージのネオン管に移り変わる。突如、四つ打ちが鳴り響き、男女7名の役者が登場し踊り始めた。ステージ上に四散したマイクを拾い、始まったのがヒップホップ・マナーに基づいた世相をぶった切るゴシップ・ラップ。卑猥なジョークを交えながら物語は進み、名古屋出身の光浦靖子がイルマリアッチのトラックに乗せたラップを叩きつけて、観客を唖然とさせながら幕を閉じた。

このテレビでは放送できないサンプリング要素をふんだんに盛り込んだアンダーグラウンドな演劇は、ヒップホップならではのアジテーションが盛り込まれ、なぜか観衆をなぜか奮い立たせる。さて、この劇団主催者から見たヒップホップの名盤とは? 次回公演(チケット完売間際!)を控えた主宰の金山寿甲に選出してもらった。

コメント:金山寿甲 編集:高岡謙太郎

東葛スポーツ・金山氏からのコメント

僕のやっている演劇を「新しい」と言ってくださる事があります。尊敬する宮沢章夫さんには「俺たちが80年代にやってたこと」と言って頂きました。そうなんです。僕のやってる事などは全然新しいものではなく、先人たちがとっくにやってきたものです。ただ機材などの進歩で派手に見えてるだけなのです。因に映像機材はローランドのP10というサンプラーを10年使い続けています。PCの映像編集ソフトなどでもっと簡単に凄い映像が作れるのでしょうが、Wu Tang ClanのRZAが『ビートメイキング』というDVDの中で「機材は同じのを使い続けろ。そうすればその機材のマスターになれる」と言っていたので使い続けています。ヒップホップにとってルーツや歴史を知る事は重要です。ベテランラッパーが「最近のヤツはRakimも知らない」などと嘆いてるところをヒップホップのドキュメンタリーなどで必ず見ます。ヒップホップ精神からすると僕も演劇のルーツを勉強しなければいけないのですが、シェイクスピアもチェーホフも読んだ事がありません。

東葛スポーツ・金山氏による名曲10選(リリース年順)

1. N.W.A – “Straight Outta Compton”

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最初にN.W.Aの文字を目にしたのは、Guns N’ RosesのAxelが被っていたキャップのロゴでした。Axelの甲高い声を聴いた時にも驚きましたが、Easy Eの声もたまげました。こんな物騒なグループでも爆発的に売れるというのがアメリカという国です。

2. いとうせいこう&TINNIE PUNX – “東京ブロンクス”

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「京都の東で東京なのだから、西東京という言葉はおかしい」と永六輔さんは生前仰っておられました。東のかっこよさを醸し出すせいこうさんは東京で最も東の葛飾区ご出身です。僕も葛飾区在住ですが、千葉県の東葛地区(流山市)から西に移動し江戸川を渡り葛飾入りしました。

3. スチャダラパー – “サマージャム’95”

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昔々、柏のディスクユニオンでスチャダラのアルバム『5th wheel 2 the coach』を購入した自分に「10年後、BOSEさんがお前の演劇を見にくるぞ」と言ってやりたいです。そして「数年後、ディスクユニオンのバイトの面接に落ちるぞ」とも。

4. ILLMARIACHI – “TOKONAIZM”

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ILLMARIACHIと同じく愛知県出身(下北半島)の光浦靖子さんにラップを提供する際に、先ず聴いて頂いたのがこの曲です。このトラックにオリジナルの歌詞をのせて練習していたところ、光浦さんが「この曲でしかできない」という事になり、こちらのトラックを拝借させて頂きました。

5. BUDDHA BRAND “ILLSON”

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「自分は相当エロい」と自負していた知人がエロ雑誌の編集の仕事についた際、その筋のプロを目の当たりにして「自分がいかに普通だったかを思い知らされた」と語っていたのを思い出す一枚です。ラップの歌詞を考えるのに煮詰まると僕はこの曲を聴くのですが、リリックの奔放さに刺激されると同時に、自分の頭がいかに普通なのかもまた思い知らされます。

6. MICROPHONE PAGER – “改正開始08”

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MURO、TWIGY、B.D.the BROBUS、D.O、それぞれのキャラや特徴を生かして16小節をカマす。この曲のミュージックビデオに大きな影響を受け、演劇の中で出演者全員に16小節の自己紹介ラップを作りました。その時にも出演して下さった菊池明明さんという女優さんは、とあるオーディションでその自己紹介ラップを披露し、大いにひかれたそうです。

7. NATURAL 9 NATION – “バンパイア”

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この曲を含むアルバム『親不孝三十六房』は絶版となっていて入手困難となっていますが、親の財布から抜き取る親不孝をしてでも買って頂きたい一枚です。

8. TOJIN BATTLE ROYAL – “NO.1 YOUNG BOYZ”

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ダウンタウンの漫才を「チンピラの立ち話」と一蹴した横山やすしに対し、松本人志はその後「チンピラの立ち話でもそれが面白かったらいい」と言っていましたが、TOJINも単なる「男4人の駄話」なのですが、それが聴いてカッコイイんだから最高です。アルバム『D.O.H.C』は棺に入れたい3枚のうちの1枚です。

9. キエるマキュウ – “MIRAI”

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よく「ギャップに惚れる」と言いますが、トラックとリリックのギャップに惚れます。トヨタが開発した水素で走る車のMIRAIのカーステでこの曲を聴きたいです。もの凄いギャップが生まれると思います。

10. KANDYTOWN “R.T.N”

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僕の世代では「フリッパーズギターとの出会いが自分を変えた」という人が結構いるのですが、僕がフリッパーズを最初に聴いた時には、後戻りが出来ないほどジャーマンメタルにどっぷりのめり込んでいて、フリッパーズとの出会いはすれ違いに終わりました。大きなお世話ですが、今の若い子にはKANDYTOWNと素敵な出会いをしてほしいです。

プロフィール
金山寿甲(かなやま・すがつ):演劇ユニット東葛スポーツ主宰。サンプリングやラップなどヒップホップの手法を用いた作風が特徴。2016年に開催された『いとうせいこうフェス』でのパフォーマンスで知名度を上げる。出演者が本人役を演じるなどのメタ要素に時事ネタを織り交ぜ独特なフィクションを作り出す。2月には根本宗子主演の一人芝居『袋とじ根本宗子』を上演する。http://www.tokatsusports.com/

Info

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東葛スポーツ×根本宗子 袋とじ「根本宗子」

【構成/演出】金山寿甲
【出演】根本宗子
【会場】3331アーツ千代田 ギャラリーB/六本木スーパーデラックス
【タイムテーブル】

・3331アーツ千代田公演
2018年2月16日(金)20:00 17日(土)15:00/20:00 18日(日)14:00/18:00

・スーパーデラックス公演
2月26日(月)20:30 27日(火)15:00/19:30

※受付・開場は開演時間の45分前より
【主催/制作】 東葛スポーツ
【協力】株式会社ヴィレッヂ、月刊「根本宗子」

http://www.tokatsusports.com/

Source: FNMNL フェノメナル

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