12月に来日公演を行ったカナダのビートメイカーRyan Hemsworth。彼はインターネットによって培われた様々な音楽の知識を基盤にした、幅広いアイディアとエモーショナルなメロディーを武器に、自身の作品や最近ではUSの人気ラッパーやアーティストにもビートを提供している。
さらに彼の射程はアメリカのシーンだけにとどまらない。「オタク」的な好奇心でJ-Popシーンや、韓国のヒップホップシーン、さらにはUKのアフロビーツシーンまで常に最先端のサウンドを追い続けている。
今回の来日時には日本でも様々なアーティストと会ったというRyanに、最近の活動やこれまでのコラボワークなどについて聞いた。
取材・構成 : 和田哲郎
通訳 : Roger Yamaha
取材協力 : Fitz Ambro$e
– 2017年はいかがでしたか?
Ryan Hemsworth – 2013年からツアーと制作をずっと交互に行ってきて、ノンストップで動いてきたんだ。2017年の初めにそれが一段落して、それから充電の期間に入ったんだ。トロントの自宅で過ごすことも多くて、自分を見つめ直して、制作もじっくり取り組んで自分を取り戻していった1年になったよ。
– ツアー生活で溜まるストレスを解消する方法はなんですか?
Ryan Hemsworth – 基本的に家でのんびり過ごすのが好きなタイプだから、ツアーは体力的にキツいものがあるよ。一番ストレス解消になるのは、SNSで地元の友達とかとコネクトしていることで、それが助かってる。あとSNSでしか繋がっていない世界中のプロデューサーに、ツアー中に会いに行けることかな。それで点と点が繋がって線になっていくって感じはあるよ。
– いつもミックスに思いもしないようなマッシュアップや、誰も知らないような曲を収録していますよね。そうした好奇心はいつから育まれましたか?
Ryan Hemsworth – 僕は3人兄弟の末っ子で、兄はすごいうるさいタイプだったんだ。僕は自分の好きなことを見つけようってことで、自然に音楽に接するようになって、いろんなアーティストとかを探すようになったんだ。そこから自分だったらその音楽に対して、どういうアプローチで対峙できるかなっていうのを考えるようになったんだ。実際にアーティストとコラボをするようになっても、お互いの観点を出し合って、作っていくのにハマっていったんだ。あと好奇心があるのは「オタク」だからだね(笑)
– 「オタク」と言ってましたけど、面白いのは今年だとHoodrich Pablo Juanだったり、アトランタのギャングスタラッパーとも一緒に仕事をしていますよね。全く違うパーソナリティーのアーティストと仕事をすることについてはいかがですか?
Ryan Hemsworth – 今年は今までとは違うタイプのアーティストと仕事をしようと思ってたんだ、一緒にいて居心地悪いくらいな。一緒にスタジオに入る前は緊張したけど、あっちがどんなことを自分に期待しているのかも不安だったんだ。ただ実際一緒にスタジオに入ると、全員ミュージシャンだし、ラッパーだろうとポップミュージシャンだろうと、そんなに変わりはないよ。アトランタでは一週間くらい滞在して、いろんな人にメールしたりしてスタジオに入ったら、すごい上手くいったから、そのあとも頻繁に行くようになって、どんどん繋がりが広がっていったんだ。
– 別のインタビューでもアーティストとコラボでセッションをするのが好きだって言ってましたが、これまで一緒にセッションした中で印象的なアーティストは誰でしたか?
Ryan Hemsworth – 難しい質問だね。2つの極端な例をあげようかな。1人はLAのシンガーのMitskiで、2~3ヶ月前にセッションしたよ。彼女は本当にプロフェッショナルで、スタジオにも自分より早く着いていたし、準備も万端で、僕の曲のこともあらかじめ予習してたんだ。実際にセッションしても良いフレーズを元に、1時間後には曲が出来上がってたんだ。だから彼女に僕がついていくっていうパターンだったね。
Ryan Hemsworth – 逆のパターンはアトランタでBrodinskiがブッキングしてくれた、Young Slime Gangっていう15人のキッズのクルーで、年も15歳くらいだったよ。Young Thugの地元の後輩で、彼のことをすごく崇拝してたね。そもそも1曲もレコーディングしたことないメンバーもいたし、20時間で18曲をレコーディングしたんだけど、プロフェッショナリズムのかけらもなかったね。でも両方とも自分がコントロールできる環境ではなかったけど、それぞれの環境に自分をフィットさせていくという意味では、とても印象的な体験だったよ。
– 今回日本にもかなり長く滞在していますよね、何かいい出会いはありましたか?
Ryan Hemsworth – 今まで来日してきた中でも、ベストの体験をしていると思うよ。毎日色んな出会いがあって、レーベルやアーティストとか。良かったのは会ったみんなが、自分と何かをやることに対してすごいオープンだったことだね。やっぱり常にオープンであることは心がけているよ。自分にアイディアがあったとしても、一緒にスタジオに入って、もし相手が別の意見を持っていたら、柔軟に対応することがいいかなと思っている。プロデューサーによっては絶対自分のアイディアを変えないという人もいるからね。でも自分はそうじゃなくて、場合によっては半分を自分のアイディア、半分を相手に任せるというのも良かったりする。それまでは全部自分で完結するタイプだったけど、コラボをしてみるとサプライズの連続で、これまで一人では到達できなかったような瞬間にいけるようになったりしたのが、すごい良かったなと思う。
– 最近YoutubeにアップしていたKorean R&B Mixがとても良かったんですが、韓国の音楽はいつから興味を持っていましたか?
Ryan Hemsworth – 韓国のああいうジャンルの音楽に関しては2017年からだろうね。実際アメリカに広がってきたのも、2017年からだと思うし。ネットでディグして、レーベルとかも探してみて、だいたいこれくらいのサークルになってるんだなっていうのを推測するんだ。いつも色んなジャンルに対して、同じような作業をしているよ。元々子供の時から学校が終わると、すぐに家に帰って色んな音楽をダウンロードするのが好きだったし、ずっとそうやって色々調べるのは好きだね。あと今は実際アーティストたちとコミュニケーションをとることができるようになったからね。
– FNMNLで最近のフェイバリットソングリストを作ってもらいましたが、日本のラッパーGokou Kuytが入っていました。彼をどのように見つけたのでしょうか?
Ryan Hemsworth – あまり覚えてないけど、確か台湾に住んでる友達からのつながりで知ったんだと思う。SNSで繋がっている人がフォローしている人とかをどんどんチェックして、こことここは繋がってるとか、この曲面白いなとかをSNS上でチェックしまくっているよ。それをやって知ったんだと思う。
– このプレイリストにはアフロビーツや色んなジャンルの曲が入っているんですが、今はどんなジャンルの音楽に興味を持っていますか?
Ryan Hemsworth – それだったら間違いなくアフロビーツだろうね。聴いているとハッピーだし、すごいフレッシュな音楽だよね。
– 地元トロントではいかがですか?
Ryan Hemsworth – ローファイファンクをやっているHarrisonかな。あとはOVOとかと仕事をしているヒップホップのプロデューサーのVinnyxとかNEENYOだね。彼らはとてもR&Bぽくて、スローで90年代のサウンドに影響を受けているよ。
– 個人的な興味になるんですが、今のアメリカの若いラッパーたち、例えばLil Pumpや亡くなってしまったけどLil Peepとかが作っているシーンについてどう思いますか?
Ryan Hemsworth – Kendrick Lamarみたいな、あるところまで到達したけど、まだまだ新しい音楽を探求しているアーティストがいるよね、その一方で若いアーティストはとてもフレッシュで面白いと思う。ただ長くシーンにいるとは思わないんだよね、人気がなくなるとかではなくて、彼らが音楽を辞めたりとか、あとは飽きたりとかしそうだよね。一週間後に何が起こるかわからないシーンだからね。でも今後もみていきたいなと思っているよ。
– 2017年はリフレッシュの年といってましたが、2018年はどういった年にしたいですか?
Ryan Hemsworth – 今年はゆっくり過ごしたから、来年はハスリンするよ(笑)まずは作りためていたものをどんどんリリースして、あとはツアーをやって、行く先々でしっかり時間をとれたらいいなと思っているよ。
Ryan Hemsworth
https://soundcloud.com/ryanhemsworth
Source: FNMNL フェノメナル