昨年リリースしたアルバム『Skin』が多くのライバルを抑えグラミー賞最優秀エレクトロニック・ダンス・アルバム賞を受賞したオーストラリア出身のプロデューサー。その優雅で壮大でメロディックなサウンドはいわゆるフューチャーベースの先駆けとも言われているが、本人は自らが作り上げてしまったジャンルに留まるつもりもなく、日々独創的なサウンドへのチャレンジを続けている。
LAに拠点を移し今年は新たなベース作りへと専念していたというFlumeに先日の来日公演の際に、話を聞くことができた。
取材・構成 : 和田哲郎
– LAに拠点を移して、生活スタイルが変わったりとか、音楽制作に変化はあったりしましたか?
Flume – 今はLAにアーティストも多いし、コラボレーターも近くにいるから色々やりやすいんだ。今自分でもスタジオを作っていて、その中で新しく知り合った人とセッションできるようにしていて、すごいライフスタイルは変わったね。DiploやCharli XCXも隣りに住んでいるから、これまでよりもハングアウトできるようになったし、Jim-e Stackとかも仲良くなったね。あと元々コラボもしていたKučkaも、たまたまLAに引っ越してきたりしたので、楽しいね。
– 前のインタビューで、今年は自由でクリエイティブな1年にしたいと言ってましたが、実際そのように過ごせましたか?
Flume – とてもクリエイティブな年になったね。でも来年のほうがもっとクリエイティビティを活かせる場所にいけると思うよ。今年はアメリカに引っ越して、そのセットアップだったり、精神的にも落ち着くために時間がかかったからね。ベースを今年作れたから来年は、もっとクリエイティブな年にできると思う。来年はもっと新しい曲を聴かせることができるよ。
– 同じインタビューでArcaにアーティストとしてシンパシーを感じてると言っていたんですが、どういった部分にそれを感じていますか?
Flume – Arcaからインスピレーションを与えられるところだね。Arcaはプロデューサーとして「こんなことができるんだ」というイマジネーションをくれるから、とても尊敬している。100%、彼がやっていることが大好きというより、彼は「なんでこんなことができるんだろう」と思わさせてくれるんだ、そこだね。
– Flumeさんもノイズっぽい音だったり、音作りに関してはチャレンジしてますよね。常にチャレンジし続けられるのはなぜですか?
Flume – そう感じてくれるのはすごく嬉しいよ。すごい飽きっぽくて、同じものばっかり作ってると飽きちゃうから、すぐに次のところにいきたくなっちゃうんだ。
– いつも新しいプラグインを探していたり、最新のテクノロジーにもすごい関心があるんですよね。いつから興味があったんですか?
Flume – 昔からすごい好奇心旺盛だったんだ。元々サックスプレイヤーだったんだけど、コンピューターで音楽を作れるのを知ってからは、どんどん新しいテクノロジーに興味を持つようになっていったね。コンピューターで音楽を作るのは誰かに教わったものじゃなくて、自分でリサーチしたものだから、どうやったらこういう音になるとかを自分で探っていって、この音はこうやって出せばいいとかを得ていったから、自然に好奇心が広がっていったね。すごいベーシックなところから自分で学んだのがよかったよ。
– Flumeさんはエレクトロニックミュージックのトレンドを作ったと思いますが、自身が作ったトレンドに固執せず新しい方向に進み続けられる秘訣はなんですか?
Flume – いい質問だけど、答えはわからない(笑)多分自分の内側から湧いてきたものだと思うから、決まった定型があるわけじゃないよ。やりたいことをやって音ができてくるから、このまま新しいもののインスピレーションが湧けばいいな。グラミーを獲ったりするとプレッシャーが大きくなるし、自分のサウンドを固めてそればっかりになっちゃうのが疲れるんだ。そういうときに初めて音楽制作をした頃のようなシンプルな場所に戻って、考えてやるより自然と湧いてでてくるものに身をまかせるんだ。一番いいのは、考え込んでプランニングしてできたものじゃなくて、ふとしたときに現れたものが大体においてベストなんだ。
– 一方ではテクノロジーを探求しつつ、アイディアに身をまかせるところが両立しているのが面白いです。そこは意識していたりしますか?
Flume – アイディアが最初にあって、テクノロジーはアイディアを上手く活かすためのツールとして考えているよ。
– 今年もツアーの日々だったかと思いますが、ツアー生活はストレスがたまるものだと思いますが、その解消のために何かおこなっていることはありますか?
Flume – ツアーは本当にストレスがたまるよ。去年3ヶ月間、アメリカをバスでツアーしたんだけど、家族も友達も、家もない状況はすごい苦しかった。みんなが思った以上にツアーはラグジュアリーなものではないよ。その対処法で覚えたのがメディテーションだよ。
– ジャケット写真には植物などが使われていますよね、特別な思い入れはありますか。
Flume – 小さい頃に親がキャンプとかによく連れていってくれて、それのおかげでサーフィンもそうだけど野外活動がすごく好きになって、そこから植物に興味を持つようになったよ。母親が植物学者なので、家の中には植物のアートや研究物があったんだ。それにアートワークを手がけているジョナサンが同じバックグラウンドを持っているし、同じように植物への愛があるから、2人がインスピレーションされたものがアルバムのカバーになっているよ。あとジョナサンの作品って本物かCGかわからない部分があるよね。リアルなのかそうじゃないのか、自然かどうかもわからないっていうコントラストが好きで、僕のサウンドもオーガニックなものもあれば、作り上げたものもあるから、そういうコントラストが好きなんだよね。
– 日本は好きな場所だと伺っていますが、よく立ち寄る場所はありますか。
Flume – 日本に来るのは4回目で、これまでは東京でライブして、フジロックに行き、あとはニセコでスノーボードをしたんだ。だからまだここって場所は決めてないけど、今回はショッピングを楽しみに来たよ。裏原らへんいいよね。
– じゃあ最後に、あるインタビューでBlurのDamon Albarnに影響を受けていて一緒に仕事がしたいと言っていましたが、その夢は叶いましたか?
Flume – まだ完成はしてないけど、実はコラボしているんだよ。
Source: FNMNL フェノメナル