ご無沙汰です。慎重になりすぎて間が空きすぎ、すっかりこんなコラムあったのか?というコンテンツになってしまいました。言い訳ですみません….。
韓国のカルチャーってここ数年で本当に身近で馴染みのあるものになったなと実感します。K-POPはもちろん、『SHOW ME THE MONEY』以降は韓国でヒップホップが爆発的にブームになって、アイドルだけじゃなくラッパーも日本で公演する機会が増えたかと思います。そんな中で、一般的に韓国の音楽を特別に意識している人でない場合、ピンとこないのが韓国のロックなのでは?と思っていましたが、今年はHyukohがサマーソニックに続いて日本ツアーを開催するなど、韓国ってこういうバンドもいるんだなあ!と知られる火付け役になった印象でした。
K-POPだけでなく様々な音楽が世界的に認められ、日本でも認知されるようになってきた中で、個人的に今気になるアーティストを何人かピックアップしてみようと思います。
Yaeji
まずはフラットでスタイリッシュな唱法と、新鮮な歌詞でPitchfork、88Risingなどのメディアに絶賛を受け急浮上しているニューヨークをベースに活動しているエレクトロニックミュージシャンでビジュアルアーティストのYaeji。
この曲はソウルでも耳にする機会が増えてきました。
脱力感のあるクゲアニヤ~クゲアニヤ~(そうじゃない、そうじゃない)のフレーズが印象的なのですが、こんな女の子が歌っていたとは!Youtubeのコメント欄には「クラスに3人いる顔だ」「勉強が良くできる友達のようだ」と書き込まれるほどの、アジア・韓国らしい着飾ってないルックスに親近感を抱きつつ、そのあまりにもクールな音楽スタイルとのギャップで1度見たら夢中になってしまいました。
この曲は今月2日に公開されたばかりにも関わらず、既に再生回数200万回を超え、アメリカでYoutubeでの人気急上昇アーティストに名前が挙がるほどに。
ビジュアルアーティストということもあり他の楽曲の手作り感のあるビデオのセンスも最高。
これはDrakeの楽曲のリミックス。リミックスワークもとても良いです。来年1月Mura Masaの韓国公演のオープニングアクトで出演、これがソウルでの初公演となるそう。(最高だ…)とにかくかっこいい!韓国でも公演があれば今後見逃したくないアーティストです。
새서년
次に韓国のインディーロックバンド새서년(セソニョン)。
2016年に結成以来、ホンデのライブハウスで着実に公演を続け、音楽ファンの間で名を知らしめた새서년は、その年に新韓カード ペンタルーキーズで銀賞を受賞し、結成1年経たぬうちに翌年のペンタポートロックフェスティバルの舞台に上がることが決定したそう。
さらに、まだ1枚もシングルを発売していないうちから雑誌『ヴォーグ』が注目の新人に選び、次世代のルーキーとしての注目が集まりました。
そんな中で、6月に初めてのシングル”長い夢”を発表し、ついにこの秋デビューEPを発売します。
2番目のシングルである”波”は強烈で印象的なドラム音の導入部に続くギターとベースと交わってうねるようなグルーヴに一気に心を掴まれます。
美しい風景の中にスキンヘッドの女の子の登場するミュージックビデオにも強い印象を与えられました。
実は先週行われた当日券のみのEP発売記念ライブは発売開始時間前から長蛇の列が出来てソールドアウト。私も行きましたが、想像以上の人気に見ることができませんでした。残念。しかし、そこで想像以上の人気と注目度の高さを実感しました。
「長い夢」や「波」を収録したファーストEPは、10月26日(木)に発売、11月18日(土)にホンデのKT&Gサンサンマダンで単独公演を控えているそうです。今後のライブや活動も楽しみです。
Samui (사뮈)
シンガーソングライターのSamuiは、2016年に『夜明け過ぎる朝』、そして今年『来春』の2枚のデジタルアルバムを発表しています。Samuiの歌は憂いや日々の気だるさの中にうっすらと希望を感じるような歌です。
実際、”春夢”は暖かく幸せいっぱいで楽しい曲で溢れる春の季節の歌ですが、そういった幸せに満たされた歌だけでは、満たされることができない人々のことを考えて作られたそうです。
“夜明けすぎる朝”というアルバムのタイトル曲も、独特な歌声とギターの音が一人過ごす夜の時間に心地良い楽曲です。Samuiの詩的な歌詞は、頑張れ!と鼓舞する訳でもなく、気分を盛り上げる訳でもなくただそこにある気持ちを優しく寄り添ってくれる感覚になります。
アルバムデザインや”Guess the Night Will Come(夜は来るだろう)”のMVのアニメーションなどSamuiのアートワークを製作しているイラストレーターether kimのアートワークもいつも素敵です。
それにしても韓国語で検索してもまだまだとても情報の少ないアーティストです。全然公式的なプロフィールがありません….笑
とはいえ、アーティスト情報は少なくとも、現在発売されている2枚のアルバムはNAVERミュージックで10点満点が与えられていることからもその楽曲の良さが見て取れのではないでしょうか。
Car, the garden
Car, the gardenは2013年シングルアルバム『Bus Stop』でデビューし、現在までVerbal Jint、Beenzino、オヒョク(バンドhyukohのボーカル)、LOCO、paloaltoなどの国内の実力派ミュージシャンとコラボレーションし、ユニークなセンスを示しているシンガーソングライターです。
以前はMayson the Soulという名前で活動していた為、こちらの名前の方が聞き覚えのある人も多いかもしれないです。(実際、私も同一人物だと最近知りました…。)
Car, the gardenの名義で発表したアルバムは2016年からで、現在3枚。ロックをベースにチルウェーブ、ポップ、ディスコを追求し叙情的な雰囲気の曲を数々発表しているが、これらのアルバムがとても素晴らしい。
今年発売した韓国の人気プロデューサーPrimaryのアルバムでコラボレーションした楽曲もとても良かったです。
『ユ・ヒヨルのスケッチブック』という多くの有名なミュージシャンが生ライブをする人気番組内の、実力派ミュージシャンの発掘という企画で700人のアーティストの中から選ばれ1ヶ月間ステージが放送され、その実力に注目が集まっています。さらに韓国のロックフェスティバル・バレーロックフェスティバルにも出演した他、今年の単独公演はチケットがオープンわずか数秒で売り切れるという人気の高さ。独特の歌声に感性的な歌詞と夢幻的なムードが魅力的なアーティストです。
PALGOU
PALGOUはサマーソニックにも出演した話題のバンドGlen Checkでドラマー兼プロデューサーとして活動していたDISCOREAと、数年前に『Birth』というエレクトロニカアルバムを発表したThe Night Owl(キム・ジュンヒョン)によって結成されたデュオ。現在はThe Night Owlが脱退し、DISCOREA一人で活動しています。
シンセ音に乗せたメロディラインがとても美しい!ソウルファッションウィークで若手デザイナーとのコラボステージを披露する他、イラストレーターNJ Sung(ソンナクジン)やクリエイティブコンテンツ制作スタジオ「nvrmnd」とのコラボ、華やかなVJがステージを彩るなど、多角的でアーティスティックな活動も光っているのも気になるポイントでした。
元々所属していたということもあり、Glen Checkの音楽を聴いたことがある人はあまりに音が近いのでは…と感じるような気もする点が少し気になるところですが、エレクトリックミュージックが好きな人にはお勧めしたい韓国アーティストです。
ジャンル関係なくまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
最後に余談になりますが、最近韓国のインディーバンドの歴史について最近色々調べていたのですが、韓国では2005年にカウチというパンクバンドのメンバーが音楽番組の生放送で下半身露出したカウチ事件と呼ばれる放送事故があったそうです。その番組は終了しただけでなく、しばらく生放送の番組を放送しなくなった他、その後4年間インディーバンドがテレビに出れなくなるほど一般的なインディーバンドのイメージを悪くし、多くのバンドが解散し、10年間インディーミュージックの低迷期を巻き起こしたとまで言われている出来事だそうです。実際2012年あたりになってようやく地上波でインディーバンドがよく見られるようになったという記事も読みました。
ちなみにその時放送終了になった『音楽キャンプ』の後身が『ショー!音楽中心』という番組で今ではすっかりK-POPアイドルの番組となっています。
現在は、この記事の中に書いたような『ユ・ヒヨルのスケッチブック』というミュージシャンがライブをするような番組があったり、Hyukohが国民的プログラム『無限挑戦』に出演するなど、その事件の爪痕を感じなくなりましたが、確かに自分が韓国の音楽に関心を持った時期2008~9年頃って「なんで音楽番組にアイドルしか出ないんだろう?」という印象でした。(現在でもアイドルの音楽番組が依然として多いのですが)
数年前までは「韓流ドラマ」、少し前までは「K-POP」だった韓国の印象が今では別のジャンルの音楽やファッションやアートなど、その他のカルチャーまでどんどん拡張して私たちの元に届いてくるようになった現在の状況がやっぱりとても面白いし、そんな勢いを感じさせる韓国のカルチャーの潮流から目が離せないと思うのでした。
ものすごく久々のコラムになってしまいましたが、韓国カルチャーのただのファンの一人としてその一端を少しづつ切り取っていければなと思います。
Erinam
韓国在住のグラフィックデザイナー ・イラストレーター。
韓国ブランド等のアテンド・コーディネーターとしても活動。
http://erinam-ports.tumblr.com
Source: FNMNL フェノメナル