昨年自主レーベルであるチキン・スキン・レコードを立ち上げ、アルバム『ROLL ON 48』を発表、東京・マイナビ赤坂BLITZでの全国ツアーファイナルを終えたばかりのフラワーカンパニーズ。このインタビューの主旨としてはバンドの運営論と楽曲制作がメインとなるので、リーダー&ベーシスト、そして株式会社フラワーカンパニーズ代表であるグレートマエカワ、ボーカルで幾多の名曲を作ってきたソングライターでもある鈴木圭介に語ってもらう事が目的であった。
ただインタビューで語った言葉は、余りにも赤裸々で真摯なフラカンとしての自己批評がセンス・オブ・ユーモアも含みながら炸裂していた。あえて言うが、フラカンは「等身大のロックバンド」などでは無い。過剰なカルマと冷徹な自己認識を併せ持つ事で多くの困難を乗り越えたモンスターとして本来なら認識されるべき存在なのだ。昔から彼等の音楽を聴いていて何度かインタビューもしてはいたが、ここまでの苦悩と煩悶をストレートに語った記憶は無かった。
正直に言うと、インタビューをテープ起こしする際に、その言葉のエネルギー量に圧倒されてしまい困惑したのも事実だ。何とか構成出来たのは、彼等が今回繰り返し語っている「認知」と「評価」というポイントにフォーカスしたからに過ぎない。それは、日本のロックシーンがフラカンを結果として定義出来ないことにも繋がるのではないかと個人的には考えている。そして、またここから本当の意味でのフラカンが評価を得る上での一助にはなれたのではないだろうか。
Interview & Text:吉留大貴 Live Photo:吉田圭子
“面”ではなく“点”を広げていく――再びのメジャーを経て自主レーベル設立へ
――最新作アルバム『ROLL ON 48』のリリースは自ら設立したレーベルであるチキン・スキン・レコードだった事も話題となりました。ただフラワーカンパニーズは元々トラッシュレコードというインデイ・レーベルに所属していた時代もありましたので、今回のレーベルの違いがあるとすればどこなのかをまずお聞かせ頂けますか。
グレートマエカワ(以下マエカワ):トラッシュは一応我々の自主レーベルという雰囲気にはなっていましたけど、当時僕等が所属していたソニー・ミュージック内のレーベル、アンティノスレコード時代のディレクターが会社を辞めて独立して作ったから、僕等以外にも何組かリリースしていて“あくまでも参加していた”という感覚だったんですね。今回は僕等全員が株式会社フラワーカンパニーズ所属でありメンバー全員が株式も所有している中で、チキン・スキン・レコードという部署も出来たと考えてもらえば良いと思います。
――つまり自分達がバンド運営そのものに責任を持つ形として、アルバムを制作して、ライブ・ツアーを実行する。ツアーグッズも企画制作する、その一環として自らレーベル業務も担当するわけですよね。具体的に自主レーベル設立の流れを考えたのはいつ頃だったのですか。
マエカワ:かなり前から考えてはいましたけど、メンバー内で話し合ったりしていたわけでもないんです。ただソニー・ミュージックと2度目の契約の際にも、「フラカンがこれから何十年と活動するとしても、ずっとやって行くとは思えない」とはっきりと言われていたし、僕等としてもそのつもりも無かった。ただ、当時最も重要だったのは、僕等が今後活動を続けていくには、まだまだ知名度が全然足りないと感じていたんです。もう一度フラカンを広める為には、自分達だけでは思い付かない色々なアイデアを外部からもらわないと、この先活動が狭まるのは分かっていたから、もう一度メジャーであるソニー・ミュージックと組むのはすごくいいチャンスだったんです。
その中で一曲でも多くカッコイイ楽曲を作ろうと全力を注いでいましたけど、でももう一方では自分達が50歳を超えた頃には仮にスタッフが居なくても、メンバーだけでもレーベルをやらねばならない状況になるだろうとは僕自身薄々は考えてもいました。僕等ぐらいの売り上げ枚数しかないバンドが、ずっとメジャーに居られる甘い世界じゃないのは分かりますよね。また30年近く自分達で音楽活動をやっていると、メジャーでこれだけ宣伝してもらっても、ここまでしか売れないという現実も身に染みる。それならば僕等のやり方でやった方が、実は突破口はあるんじゃないかという考え方も出てきた。自分達に絶対的に自信があったわけではないけど、色々な考えや理由が結び付いて今回のレーベル設立に至ったんですよね。
――フラカンが日本武道館ライブを大成功させた際に、関係者挨拶でマエカワさんが、「また日本武道館でライブやりたいです!」と宣言していた姿を今でも覚えています。人によっては今回のレーベル設立とは矛盾するのかもしれないけれど、言われたように“突破口”として考えてみると、大きな意味で繋がってくるのかもしれませんね。
マエカワ:その点はとても大事ですよ。自分達でレーベルを運営するという事は、「もう自分達は、世の中や音楽シーンから離れたところで、マイペースな活動を続ければいい」といった風に見られているかもしれないけれど、そんな事はメンバー全員全く思っていません。むしろメジャーで何年も活動してきて、そのフォーマットで活動するのも必要だと改めて凄く思うんですね。特に新人の時代は世の中に出るには、メジャーの色々なスタッフによるケアがどうしても必要なのは間違いない。だけどフラカンの場合キャリアがある分、対広告効果も分かっているから様々なTVや雑誌に出られるわけでは無いですから。
それに僕達のような全国をツアーするライブバンドには、地方で生まれた多くの関係性もありますよね。地方のメデイアの方々から「こんなこと出来ないでしょうか」という話を頂くことも少なからずあります。メジャーでやるような“面”で展開されるプロモーションは難しいけど、一見凄く細かく見えるかもしれない“点”を広げていく形の宣伝は以前よりも出来ているかもしれないなあと。それが先程語った自分達でレーベルを作ったからこそ生まれた“突破口”だと確信しています。
――そうやってフラカンがライブバンドであるから築かれたネットワークそのものをベースに、今後のビジネスも含めたプランを考えていくスタンスとも言えますね。
マエカワ:それはありますよね。勿論バンドを運営する上で首都圏が一番人口は多いからそこが重要なのは当然なんですけど、だからといってそれだけでいいとは絶対に思ってはいません。僕等は全国のファンやライブハウスとの関係性で成立している存在だから、今後より一層色々と地方との人々との関係性で何かが出来れば嬉しいですよね。
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