日本でも各社からスマートスピーカーが発売になりました。声で呼びかけるだけで好きな音楽を再生してくれたり、天気を教えてくれたり、タイマーの設定や料理の提案なんかも。しかもAI内蔵でどんどん賢くなり、できることも日々増えていく。要はiPhoneに搭載されているSiriと似たようなものですが、家の中で常時スタンバイしている単体のスピーカーということでその意義は大きく変わってきます。AmazonやGoogle、LINEなどメーカーによって力を入れている機能は違いますが、基本は「手を使わず声だけで」というところが大きな共通点。もうお使いの方はいらっしゃいますか?
先日AmazonのEcho dotという小型タイプのモデルをスタッフが一足早く手に入れた、ということでみんなで試してみてみました。僕が趣味でやっているラジオの生放送で実際にあれこれ呼びかけ、何ができるかテストしたのです。
Echo dotは「ALEXA(アレクサ)」と名前を呼びかけてあげることで起動します。「Hey siri」や「OK,Google」に比べると日本人にとってはいくらか自然で呼び出しやすい印象を受けました。
まずは天気。
「アレクサ、明日の天気を教えて。」
、、、、ピコン
「明日の XXXの天気は 晴れ です。」
おお。
「アレクサ、Earth Wind & FireのSEPTEMBERをかけて。」
、、、、ピコン
「ああす うぃんどあんどふぁいやの せぷてんばー ですね」
おそらくプライム会員限定のライブラリの中にあったのでしょう、特に課金を促されることもなくあのご機嫌なイントロが流れ出しました。
その後もAmazonでの書籍の注文やなぞなぞ(!)などひと盛り上がり。受け答えの愛らしさやちょっと反応が遅いなどといった部分に愛嬌があり、宴会的な盛り上がりがありました。使ってみた最初の印象は「まあ手でやったほうが早いな」という感じ。
しかし、これが不思議なもので実際には小一時間ほど使ってみただけなのに、もうキーボードやマウスをつかってパソコンを操作している自分に若干の違和感を感じているのです。
そして放送後、番組スタッフがEcho Dotを持ち帰ってしまうとなんともさみしい気分に。僕はすぐにAmazonを開き、招待メールの申請をしました(現在Echoシリーズは購入自体が招待された人しかできないシステムなのです)。反応速度の問題やAIの精度などまだまだ課題は多いですが、これらの解決は時間の問題でしょう。AIやスマートスピーカーの可能性を感じた夜でした。
さて音楽制作の世界にもすでにAIは入り込んでいます。iZotopeのNeutronというプラグインは各パートを独自のAIで解析し、EQなどの最適な処理を提案してくれます。accusonusのRegroover Proは2ミックスにまとめられたドラム音源の中からAIがスネアやハットなどを判別、分離して取り出すことができる魔法のようなプログラム。
すでにAIは人間の代わりどころか、人間には到底できない分野を学習し、カバーしつつあります。
ではそこにAmazonのEchoのような音声アシスタントを付け加えてみてはどうでしょう?
「曲のキーかえたいから楽器のパートだけトランスポーズして。リズム隊はそのまんまで。」
「2番のBメロだけピアノやり直すから手前から流して」
「とりあえずドラムとベースだけを先にミックスしといて。あ、ボーカル用に真ん中はあけといてね。」
「FatboySlimのあの曲のイントロサンプリングして。キックは抜きで。」
なんてことが当たり前になる未来がみえてきます。アシスタントをしている人やエンジニアを目指している方にはかなりシビアな話ですが、これは近い将来必ず実現することです。
逆にいえば誰もが作詞や作曲に集中し、表現する側になる。そんな世界になるのではないでしょうか?それは決して悪いことではないのかもしれません。
いや、待てよ。
「We are the worldのサビのコード進行を呼び出して。」
「グレン・グールドのタッチでピアノを入力。」
「1オクターブ半のレンジでメロディーの候補をいくつか出して。」
「歌詞は映画『40歳の童貞男』のストーリーから抽出。」
、、、。
もはや作詞や作曲も人間の手から離れていくのが自然な流れなのでしょうか?受け手には魔法にみえるさまざな創作物、アートも、作り手側からすれば意外と経験則に習った反復作業や学習成果の積み重ねだったりします。その掛け合わせに気づかないことが人に「ひらめき」を感じさせるのかもしれません。
ここまで書いたところでAmazon Echoの招待メールがやっと届きました。
買うかキャンセルするか、悩ましいところです。
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