念願叶って近藤さんとライブでご一緒したのは今年の4月のことだった。MCで、「近藤さんの絵はライブの最後に完成するんじゃなくて、常にその瞬間が完成形だから、ぜひ絵を見ながら聴いてください」と言ったのをよく覚えてる。近藤さんのスタイルは独特で、「こんなライブペインティング見たことない」とみんなに言われるらしい。初めて見たとき、漏れなく私もそう思った。ダイナミックに紡がれていく幾つもの物語。あぁこれが“ライブ”ペインティングだ、と思った。
近藤さんが29歳で絵を描き始めてから12年目になる今年、代田橋のCHUBBYで9回目となる個展『絵の旅に』がスタート。取材は個展初日の朝、オープン前のCHUBBYにて。優しい口調と眼差しで語られた近藤さんのこれまでとこれからと。
キャンパスに落とされた絵の具のように、流れ流れて続いていく近藤さんの絵の旅はこれからどんな物語を描いていくのか。
Interview&Text:Nozomi Nobody Photo:奥田侑史 / Nozomi Nobody 取材協力:CHUBBY
<『circle of 3 colors』@東京 代田橋chubby [ 樽木栄一郎/近藤康平/宮川剛 ]>
6時半に起きて10時に眠る生活
Nozomi Nobody(以下Nozomi):近藤さんって今どちらに住んでらっしゃるんでしたっけ。
近藤康平(以下近藤):茨城の取手っていうところ。
Nozomi:茨城か。都心までどれくらいですか?
近藤:大体2時間くらいかな。家から駅まで20分で、常磐線に乗って上野まで行って、で、山手線乗って。
Nozomi:ずっと取手なんですか?出身も茨城ですよね。
近藤:高校まで取手にいて、大学は鳥取大学っていうところに行って6年間勉強して、それから東京の亀有に引っ越して。取手に戻ったのは4年前かな。
Nozomi:ブログか何かで写真を見たんですけど、本当に何もないところですよね。
近藤:そうそうそう(笑)。特に僕が暮らす周辺は自然だけ。利根川と小貝川って川が流れてて、それがぶつかるところ辺りなんだけど、本当「自然!」って感じ。いつも小貝川散歩して、写真アップしてる。夕焼けの写真は主にそれ。
Nozomi:毎日どういう生活なんですか?
近藤:毎日ね、父さんと二人暮らしだから、父さんの朝ごはんの時間に合せて6時半くらいに起きるのかな。朝ご飯作って、一緒に食べて、そのあと洗濯とかして、大体9時くらいから制作始めるでしょ。で、12時に父さんの食事があって、また1時から制作の時間があって、3時とか4時くらいから散歩の時間で。2~3時間くらいぼーっと歩いたり自転車乗ったり、晩ごはんの買い出しも済ませて、7時に晩ごはん始まって、そのあといつも父さんとの時間を取ってて、一緒にテレビ見るのね。野球あるときは野球見て……月曜日はさ、「鶴瓶の家族に乾杯」ってあるでしょ?あれ好きで見て。
Nozomi:わーいいですね、就寝は何時くらいなんですか?
近藤:あんまり忙しくないときは10時くらいかな。健康的だよね。
Nozomi:じゃぁ結構ルーティンというか、「この時間からこの時間に作って」っていうのが割と決まってるんですね。
近藤:そう。結構決めてやる方が好きなんだよね。リズムが生まれるから。やっぱ忙しいときは深夜になっちゃうんだけど。
Nozomi:日々日々描いてる?
近藤:毎日描いてる。
Nozomi:それって割と目的がなくても描いてるんですか?
近藤:今は個展があるから、まず個展の(ための作品を)描くのがあるでしょ。あと依頼もの描くのがあるのと、あと自由に何か、発表するわけじゃないけど描くのもあるよね。ちょっと遊びっていうか。そういうの(ギターを弾くフリをしながら)作るでしょ?
Nozomi:あぁ、そうですね。
近藤:あとは誰かの絵を見て「どうやって描くんだろう」とか、昔の絵見て「あぁこの構図覚えとこう」とか…練習に近いのかな。そういう絵も描く。だから絵描いてない日は多分ないんだよ。
「君は就職活動は一切しなくてよろしい」
Nozomi:29歳で絵を描き始めるまでは何してたんですか?
近藤:元々大学院で森林の勉強してて、先生が変わった人で「君は就職活動は一切しなくてよろしい」って言われて、「え、何でですか!?」って(笑)。でも「いいんです、いいんです、一生懸命論文を書き上げることが大事なんです」って言われて、まぁ就職活動しないからその後就職先は多分ないんだけど(笑)。
Nozomi:あはは
近藤:一生懸命論文書いたら何かにはなれるはずだって先生は言ってて。
Nozomi:それは、誰にでもじゃなくて近藤さんだからそう言ってたんですか?
近藤:そうそう、僕の性格見て「近藤君は両方っていうよりは、ひとつまず集中してやった方がいいですよ」って言われて、僕もその先生好きだったから、「あ、そんなもんですかね~」って。
Nozomi:そうなんだ(笑)。
近藤:だから論文は一生懸命書いたけど、就職先がなかったんだよね。大学院卒業して、「どうしよう」ってなって、とりあえず東京の街でも歩いてみようと思って。表参道歩いてちょっと裏道入ったところに絵本の専門店があるんだけど、絵本しか売ってない本屋で、それも結構大きくて。「絵本しか売ってない本屋あるんだ」ってびっくりして、そしたら次の日新聞に求人募集が出てて、「おお、すごいタイミング」と思って応募したら採用されて…。だからしばらくは絵本の書店員をやってたんだよね。
Nozomi:あ、そうなんだ。絵本。
近藤:で、その途中で29歳で何となく描き始めたんだよね。絵本描くってわけじゃないけど、絵描いてみようと思って描いてみて。だからしばらくは書店員やりながら絵描いてた。ただ描いてたっていうだけで、別に絵描きになろうって思ってなかったから、そのあと絵本の編集者にもなってるんだよね。32歳で転職して。
Nozomi:そうなんですか。知らなかった。
近藤:うん。意外と絵本業界に長くいて、編集者も36歳までやってるのかな。で、そっからは絵描き。29歳で描いてるけど、絵で生活するようになったのは36歳から。
物書きになりたかった
Nozomi:元々森林の勉強をされてたのは、そういうお仕事をされたいと思ってたんですか?
近藤:途中までは森林の研究者になりたいって思ってたんだけど、森に行って「気持ち良いな」とか「楽しいな」って思う気持ちと、研究は割と別だなって後から気付いて。森の研究するのは楽しいんだろうけど、この「楽しい」とか「気持ち良い」とかっていう感じを表すのは研究じゃないなぁと思って。だから最初、大学院卒業した時は物書きになりたかったの。森だけじゃなくて、海とか空とか見た時に「気持ち良い」とか感じるあの感じを表現したいなと思ったんだよね。
Nozomi:それは小説?
近藤:そう。だから短編小説とか書いてたんだよ、昔。
Nozomi:そうなんですか!それは発表されてるんですか?
近藤:発表されて、小っちゃい賞とかもらってるんだよね、実は。
Nozomi:え、本当に!?
近藤:うん、ほとんど誰にも言ってないけど。
Nozomi:すごい。見てみたいな…。ちなみに論文は何について書いたんですか?
近藤:論文はね…、森林学科ってすごい面白い学科で、世の中の全部のジャンルが含まれてて、生態学はもちろんあるし、樹木そのものの成分の研究もあるし、そこから化粧品作ったりとか、建築材もあるし、あと計画学っていう、どういう風に植えて伐採したら効率良いのかとかもあるし、全部あるんだよね。
鳥取にかぎらず日本には「農村」って言葉と「山村」って言葉があるんだよね。林業を中心とした村があって、その村の人達はやっぱり独自の考え方とか生活習慣があって、「森林文化」って呼んでたんだけど、そのおじいちゃん達の森林に対する想いとか、日頃の習慣とか、そういうフィールドワークをやったんだよね。だからどっちかって言うと文系寄りで。村が過疎化して、もう(その文化が)廃れて無くなっちゃうなと思ったから、それを残しておきたいなーと思って。
Nozomi:自然と人との営み。
近藤:そうそう。本当に単純に毎日の暮らしとか、森林のことどういう風に思ってるのかとか。研究方法をすごい迷って、アンケート調査とか五段階評価とかして統計取って数量化するのが一番分かりやすいんだけど、それがあのおじいちゃん達の気持ちを表現する方法には思えなくて。だから毎日くっついてって、メモとかとって…ちょっと文章っぽい感じ。「こういうこと考えてますよ」とか。だからあんまりいい論文じゃないんだよね(笑)。
Nozomi:そっか、論文としては(笑)。茨城で生まれ育った中で自然に興味を持ったんですか?
近藤:うん、本当そうで、毎日遊ぶ場所が山の中だった。茨城だから高い山じゃなくて森とか林っていう感じの山。毎日そこで遊んでたんだよね。
きっかけはmixi
Nozomi:子供のときから絵描くの好きでした?
近藤:絵はね、もう本当に普通。美術の時間に描くくらい。小さい頃から歌ってた?
Nozomi:私はすごい歌ってましたね、好きでした。
近藤:歌ってたんだ。まぁそうだよね。だから僕が絵描きになるなんて誰も思ってなくて。
Nozomi:でもそうですよね、近藤さんだって思ってなかったわけだし(笑)。何か具体的なきっかけがあったんですか?
近藤:絵を描き始めるきっかけはmixiなんだよね。職場の後輩に誘われて始めたんだけど…それまでSNSって知らなかったからさ、ただ日記を書いてみんな発表して、これって不思議な行為だなと思って。
Nozomi:うん、確かに。
近藤:それで絵でも付けてみるかと思って、絵を描いてみたんだよね。それが意外と自分でも上手く描けてびっくりして、見た人もいいねって言ってくれてすごい嬉しくて、調子に乗ったっていうかね。
Nozomi:へー!そうなんだ。
近藤:そうしたらすぐカフェギャラリーみたいなところの人が「うちで展示やりませんか」って言ってくれて、それで「やっぱり俺上手いんだ」みたいな感じになって(笑)。
Nozomi:あはは
近藤:それからどんどん。
Nozomi:最初はどういう絵を描いてたんですか?
近藤:最初はね、Windowsにペイントっていうソフトあるでしょ。あれで描いてたんだよね。
Nozomi:マウスで??
近藤:そうそう、カチ、カチって(笑)。
Nozomi:えー本当ですか(笑)。
近藤:だから初個展はデジタル作品をプリントアウトして貼り付けるっていう。
Nozomi:へ~……それが29のとき?
近藤:29のとき描き始めて、(個展は)その次の年くらいじゃないかな。今思うと本当下手くそで、でもやっぱり褒められたから調子に乗ったんだよね。
Nozomi:じゃぁその辺りから徐々に「絵が良いかもしれない」って思い始めたんですか?
近藤:でも絵描きになるとはその時も思ってなかったかなぁ。そんなに決断しないまま絵描きになっちゃったから。
一回目のライブペインティング
Nozomi:絵を描き始めた最初の頃はどういう活動してたんですか?
近藤:活動はね、今と一緒だよ。個展やってライブペインティングするって感じかな。
Nozomi:じゃぁライブペインティングも結構早い段階からやってたんですね。
近藤:うん。ライブペインティングはじめたのが、34歳のとき。TREMOLOIDっていうバンドに誘われてさ。でもボーカルの陽介君(小林陽介)に「世の中いっぱいライブペインティングあるけど俺あんまり好きじゃないんだよね」って言われて、「えっ」と思って。よくあるのがさ、ステージにバンドマンがいて、会場の後ろの方で全バンドに時間費やして一枚描き上げるみたいな。あれが陽介君は嫌いだったみたいで。こっち(絵描き)に対するリスペクトもあって、「一緒にやるなら俺たちの音楽と一緒にやる意味を作って欲しい」って言われて、それであのスタイルになったんだよね。曲ごとに絵が展開していって40分間くらいで描き上げる。だから陽介君に最初にそう言われたのすごい良かったなと思って。
<青谷明日香と近藤康平 ひきこもごも>
Nozomi:てっきりやっていく中であぁいう風になっていったのかと思ってたんですけど、最初からあのスタイルだったっていうことですか?
近藤:そうそう。でも一回目はやっぱりやり方わかんないから色鉛筆使ったりとか。
Nozomi:あぁそうなんだ。
近藤:でも大まかなスタイルは一緒かな。曲ごとに何を描くのか決めるわけじゃなく展開していくみたいな。でもそのうち筆使うよりは手の方が速度が増すし、反応が早いからいいなとか、パフォーマンスとしても手の方が見ごたえがあるものになるなぁとか。それで今のスタイルになったんだよね。
フィッシュマンズの“やり方”に影響を受けた描き方と生き方
Nozomi:元々音楽は好きだったんですか?
近藤:うん、音楽はすごい好き。絵は結構フィッシュマンズの影響を受けてる。
Nozomi:へー!
近藤:誰かの絵の影響っていうよりは、フィッシュマンズのあのやり方に影響を受けてる描き方というか。
Nozomi:具体的にはどういうところですか?
近藤:まずさ、フィッシュマンズってジャンルじゃないじゃない。感じたことを最適に表現するための音を探してる感じでしょ。リズム、メロディー、音もそうだし、そのやり方がまずすごいいいなと思う。何かのインタビューでさ、タバコの煙がふわーって上がってるのをすごい綺麗だなと思うけど「タバコの煙のことを歌うんじゃなくて、それを音なりメロディーなり、あの感覚が蘇るようなことをやりたい」ってようなことを言ってて、わかるなーと思って。
雲とか森とかさ、すごい好きなんだけど、あれをそのまま一生懸命描いても、何ていうか…本物があるからね。だからそうじゃなくてこういう(作品を指して)青い流れとかでそれと近い感情になる描き方したいと思うんだよね。
Nozomi:なるほど。そうなんですね。
近藤:そう、だから創作方法としてはすごい影響受けてるの。それとジャンルも決めないで作っていくというところは、生活もそれに準じてるっていうか。「絵描きを目指す!」っていうよりは一番気持ち良いことをしていくための何か。だから絵を売る場所や方法もギャラリーとかじゃなくて、探してく、とか、作ってくっていう感じで。
「何やってもいいはずなのに」CHUBBYと作った独自のスタイル
Nozomi:そうかぁ、確かにあんまり近藤さんみたいな活動されてる方っていないですよね。あんまり絵描きさんのことってわからないんですけど…。
近藤:うん、全然いないと思う(笑)。やっぱり絵を発表するっていったらみんなギャラリーとか探しに行くし、あとは詳しくは知らないけれど普通絵描きになるっていったら美大出てギャラリーに入って、公募展に出して、とか。でもね、本当はそうじゃなくてもいいはずだよね。
Nozomi:そうですよね、音楽だって本当にそうだし…。それはすごくわかる気がします。
近藤:そうそう、本当何やってもいいはずなのにね。創作もそうだし、生き方もそうなんだけど、僕はそれ探すの結構好きな方なんだよね。
Nozomi:色んなやり方?
近藤:うん、そうそう。何か出会いがあって、それを大切にしていくと「あぁこうなった」みたいなのが多いっていうか。CHUBBYと出会ったのも本当にたまたまだから。でも一番大切な場所になった。
Nozomi:ここで展示を始めてもう9年目?
近藤:うん。阿佐ヶ谷のイネルっていう小っちゃいカフェで展示してたら、たまたまオーナーの高木さんが自転車で来て、「うちのカフェでも展示出来るんでやってみませんか」って。高木さんて、ロンドンのギャラリーでも勤めてたことがあるからキュレーター的な存在でもあって、「康平君、ロンドンだと買い物帰りのおばあちゃんがふらっと入ってきて、この絵良いわねって買っていくような、そういう文化があるんだよ」って教えてくれて。
僕もやっぱりギャラリーに絵を飾って、そこに来るような人だけに絵を届けるんじゃなくて、音楽とか映画とか服とかの選択肢のひとつぐらいに僕の絵も見てもらいたいし売れたらいいなと思って、だからこのスタイルは値段設定も込みで高木さんと作ってきたんだよね。
Nozomi:うんうん。確かにこういう場所ならごはんとか食べながら作品を見て、「あれがいいなぁ」とか、
近藤:そうそう、ギャラリーだと、僕はもう10分くらいしかいられないんだよ。酒も飲めないし、座るとこもないしさ。でもこういうところだと長時間くつろぎながら見て、自分の生活も想像してもらってさ。お酒飲んでればすぐ仲良くなっちゃうから、新しい出会いも沢山あるし。そういうのが好きなんだよね。
偶然生まれた模様に物語を乗せていく
Nozomi:近藤さんの絵は何かちょっと宇宙っぽい感じとか、具体的な景色ではないものが多いじゃないですか。それはやっぱり茨城に住んでいて、自然の中でずっと暮らしてることが大きいんですか?どういうところからモチーフとかイメージが来てるのかなと思って。
近藤:やっぱり取手の生活はすごい影響があって、その自然の中で育ってきてるから大学でもそういう勉強をしたし、自然が好きっていうのが僕の中のひとつの絵を描く背景なんだよね。あとはやっぱり絵本の業界に長くいたっていうのもすごく大きい影響のひとつで。やっぱり抽象画じゃなくて、(絵の中に)物語があるっていうのはかなり童話とか絵本の世界観を受けてる。
Nozomi:なるほど。
近藤:一枚の中に物語があって、ページをめくるような感じで見てもらえるような絵を描きたいなって思いはあるんだよね。
Nozomi:うん、近藤さんの絵はすごくストーリー性がありますよね。描くときには明確な物語があるんですか?それとも描きながら浮かんでいくんですか?
近藤:手法としてはなるべく人為的じゃなくて、雲とかみたいに自然の流れで生まれるのが奇麗だなと思ってて、コントロールして模様を描いてるんじゃなくて、絵の具を垂らして水かけて生まれた模様に僕が物語を乗っけてくっていう。
Nozomi:うんうん。
近藤:「見立て」ってあるじゃない。日本の文化の。庭の中に石を置いて山に見立てたり、ちょっとした雑草を森に見立てたり、雨の雫を川に見立てたりとか。そういう文化も無意識だけどかなり影響を受けてると思う。この模様が洞窟っぽいなーとか、このひび割れ方が崖っぽいなーとか、絵の中に物語を見立ててくっていうか。
Nozomi:なるほど、じゃぁ結構ひとり遊びっていうか、自分でやったものからまた自分でインスピレーションを受けて、ひとりキャッチボールみたいな。
近藤:そうそう。「あ、こんな模様が生まれたんだ」とか思って、「あ、山に見えるなー」とか「ここに立ってるのは女の子だなー」とか。
Nozomi:じゃぁもうそれでずっとやれちゃいますね(笑)。そっかぁ。何かすごい納得しました。
近藤:そう。本当奇麗だしね、生まれる模様が。やっぱり自分の力じゃ描けないなぁって。
Nozomi:こういう作品描いてみたいなーとかってありますか?
近藤:今?
Nozomi:うん。
近藤:あのさ…、青森の美術館に行ったら、体育館くらいの広さのところに三面シャガール(※1)の絵があるんだよね。多分10何メートルある絵。昔の舞台の美術として描いたらしいんだけど、その空間の真ん中に席があって、座って見れるんだよね。すっごいそれに感動して、これくらいの大きい絵描いてみたいと思った。いつか財力とかいろいろ備わってきたら(笑)、やりたいよね。
※1 マルク・シャガール。20世紀のロシア出身のユダヤ系フランス人画家。
Nozomi:確かに、近藤さんの作品って小さいのもいっぱい可愛いのありますけど、やっぱり大きいのすごくいいなと思った。
近藤:やっぱりさ、この中に入りたいって思うような絵描きたいから、大きいと効果が増すよね。あと美術館とかじゃないくて、海辺歩いてたらイーゼルが何本も立ってて絵が飾ってあるとか、森歩いてたら木に絵がかけられてるとか、そういう変則的な展示の仕方もやりたいなーとか。
Nozomi:うん、良さそう。瀬戸内芸術祭に行ったことがあるんですけど、そういう感じですよね。すごい良かったなぁ。
近藤:そうだよね、日本の自然はすごい良いからねー。
Nozomi:やっぱり自然の中で見てみたいっていうのはありますよね、近藤さんの絵は。
近藤:成山君(※2)とNozomiさんと知床の方とか行ってさ、雪原の中に絵があって…
※2 成山剛。北海道のバンドsleepy.abのボーカル。近藤さんとは定期的に一緒にライブを行っている。
Nozomi:うわぁ、それ最高ですね。
近藤:そういうライブとかやってみたいよね。
12年目、新しい旅に
Nozomi:今回の展示は全体のイメージというか、テーマはどういうところなんですか?
近藤:『絵の旅に』は、絵を描き始めてから何か旅みたいなものだったなぁと思って。今まで辿って来た旅っていうか、描いてきた絵をもう一回描くっていうのと、あと新しい手法を見せようっていうか、試そうっていうそのふたつ。だから『絵の旅に』っていう絵そのものはないんだよね。トータルで、そういうコンセプト。
Nozomi:新しい手法っていうのはどの辺のやつですか?
近藤:割とね、両極端な方向で新しいことやってて。ひとつはあぁいうちょっとぼこぼこしたような、盛り上げるような、素材感を出した描き方と、もうひとつの方向はあぁいうちょっとかなりイラストレーションに近い紙に描いた小作品。寅さんとかさ。
Nozomi:あ、あれ、新鮮だなと思って。寅さん可愛かった。
近藤:そうでしょ(笑)。あぁいうちょっと力を抜いたものとか。
Nozomi:小さいシリーズは水彩ですか?
近藤:あれもね、一応アクリルなんだよね。かなり水たっぷり描いて、かなり水彩に近い描き方してる。
Nozomi:12年経って、「新しい旅に」っていうことが書いてあるじゃないですか。それはどういうところですか?
近藤:絵の描き方もそうだし、活動そのものも来年は変化付けて、もうちょっと服を一生懸命やりたいんだよね。ACID GALLERYっていうブランドに提供はしてたんだけど、もうちょっと自分で服も作ってみたいなーとか。絵を届けられる範囲をもうちょっと探りたいなっていう感じ。
Nozomi:あぁじゃぁ色んなアウトプットの形を。
近藤:そうそう。本も作りたいし。まだ画集がないから、どっかのタイミングで作らなくちゃーと思ってるけど。届けられる範囲と方向をちょっと考えようかなーって。
Nozomi:あの、アウトプットの方法として近藤さんは今は絵を描いてるけど、そうやって流れ流れてまた違うものになることもあると思いますか?
近藤:うーん…絵が一番しっくりしてる……歌が歌えたら一番かっこいいだろうなーと思うけど。
Nozomi:え、本当ですか?
近藤:うん、楽器出来たりさ。
Nozomi:バンドやったことないんですか?
近藤:ないないない。一番羨ましいって感じ。やっぱり早いしさ。本当直接的に伝えられるじゃない。かなり原始的な表現だしさ、一番パワーあるなと思う。歌うたえるの本当羨ましい。
Nozomi:そうかぁ、やってみないんですか?(笑)
近藤:えー出来ないよ、絶対(笑)。
Nozomi:そっか(笑)。でもじゃぁたまたま絵のところに辿り付いて、ここから本当に『絵の旅に』っていうところなんですね。
近藤:そうだね。偶然だよね。色々ラッキーだなって、本当にありがたいなって思ってる。
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